歴史まちづくり〜地域における歴史的風致の維持及び向上〜
 (地域の活性化、まちづくり・まちおこしへの取組み 1)
歴史まちづくり
〜地域における歴史的風致の維持及び向上〜
 地域にある城や神社仏閣またその周辺の町家や武家屋敷など、歴史的価値の高い建築物が残され、工芸品の製造販売や祭礼行事など歴史と伝統を反映した人々の生活が営まれて、それぞれの地域では、固有の風情、情緒、たたずまいが醸し出されています。
 平成20年、新たな制度として、文部科学省(文化庁)、農林水産省、国土交通省の共管の「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」(通称:歴史まちづくり法)が制定されました。
 この法律は、全国の市町村を対象に、歴史的な資産を活用したまちづくりの実施に携わる「まちづくり行政」と「文化財行政」の連携により、歴史的風致(地域固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動と、その活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境)と後世に継承するまちづくりを進めようとする取り組みを国が支援しようとするものです。
 郷土史探訪をテーマにした、「ツーリズム振興」と「地域の特色を生かしたまちづくり・まちおこし」を標榜する各関係の地元にとっては、大変ありがたい、強力な制度です。
【 歴史まちづくり法の概要 】
●法律の主な骨子は、次のとおりです。
(1)による「歴史的風致維持向上基本方針」の策定
(2) 市町村が作成する「歴史的風致維持向上計画」の国による認定
(3) 認定を受けた「歴史的風致維持向上計画」に基づく特別の措置
(4) 「歴史的風致維持向上地区計画」制度の創設
●歴史的風致維持向上計画
 市町村は基本方針に基づき、次に掲げる事項が記載された歴史的風致維持計画を策定し、国の認定を申請できます(第5条)。 計画策定には、連携のもとに施策を推進するNPO等多様な主体である歴史的風致維持向上協議会や支援法人の意見を組み入れられます。
(1)歴史的風致の維持及び向上に関する方針
(2)重点区域の位置及び区域
(3)文化財の保存又は活用に関する事項
(4)歴史的風致維持向上施設の整備又は管理に関する事項
(5)歴史的風致形成建造物の指定の方針
(6)計画期間 等
●歴史的風致の維持及び向上に関する方針(歴史文化基本構想)
 「歴史的風致維持向上計画」には「当該市町村の区域における歴史的風致の維持及び向上に関する方針」(第5条第2項第1号)を記載する必要があります。
歴史的風致維持向上計画の作成に当たっては、あらかじめ、地域に存在する文化財を調査等により的確に把握し、文化財を周辺環境まで含めて総合的に保存・活用するための基本的な構想である「歴史文化基本構想」を策定し、それを踏まえた歴史的風致維持向上計画とするよう努めることが望ましいと考えています。
●重点地区
 歴史まちづくり法では、市町村が作成する「歴史的風致維持向上計画」には、「重点区域」を定めなければなりません(第5条第2項第2号)。次のいずれかに該当する区域及びその周辺の時の区域で、歴史的風致の維持及び向上を図るための施策を重点的かつ一体的に推進することが特に必要な土地の区域です(第2条第2項)。
(1) 重要文化財、重要有形民俗文化財又は史跡名勝天然記念物として指定された建造物の用に供される土地
(2) 重要伝統的建造物群保存地区内の土地。
 つまり、歴史まちづくり法においても、文化財の周辺における取組ということがポイントになっています。

●国による認定
 市町村が策定した歴史的風致維持向上計画を、国(文部科学省、農林水産省、国土交通省)は関係行政機関と協議し同意を得て認定します。 

●認定計画に対する特別の措置(法律上の特例措置)
(1)歴史的風致維持向上地区計画(第31条等)
 伝統的工芸品の展示場や、郷土料理店といった歴史的風致にふさわしい用途の建築物等の立地が可能となる地区計画制度です。都市計画決定においては、土地利用の基本方針を定め、@地域の歴史的風致にふさわしい用途、A規模、形態意匠に関する事項、Bその見地地区物の建築を認める区域を設定、を満たす建築物の建築が、用途地域による制限に関わらず可能になります。
 歴史的な建築物を利活用し、新たな担い手等により地域を活性化できます。
(2)歴史的風致形成建造物(第12条〜21条)
 市町村が、重点区域内の歴史的な建造物を、歴史的風致維持向上計画に即して歴史的風致形成建造物をして指定できます。指定された建造物の増改築、除去等については、30日前までに市町村長への届出が必要です。届出を受け市町村長が必要に応じ勧告、あっせんその他の措置を実施します。当該建造物が文化財であるときは、所有者等は、文化庁長官に管理又は修理に関する技術的指導を求めることができます。
(3)農用地区内の開発行為の特例(第23条)
 農業用用排水路の増改築を行うにあたり、施設が歴史的風致の維持・向上に支障がある場合には、許可できないこととされています。
(4)文化財保護法の規定による事務の特例(第24条)
 重要文化財等に関する文化庁長官の権限に属する事務のうち、現状変更の許可等に関するものの一部を認定町村の教育委員会が行うことができます。
(5)都市公園法の特例(第25条)
 認定市町村は、都道府県が公園管理者である都市公園において、公園管理者の権限を代行できます。
(6)路外駐車場についての占有の特例(第26条)
 都市公園の地下を活用した路外駐車場の占有許可の手続きを簡素化されます。
(7)開発許可の特例(第28条)
 歴史的風致維持向上計画に定められた市街化調整区域内における遺跡に係る歴史上価値の高い楼門その他歴史的風致を形成することとなる建築物の復原を目的とした開発行為については、開発許可を行う際に立地基準に係る審査を省略できます。
(8)電線共同溝の特例(第30条)
 電線共同溝を整備できる道路の範囲を拡大し、無電柱化を促進できます。
(9)歴史的風致維持向上支援法人(第34条)
 市町村は、住民主導の持続的な取組を支援するNPO法人や一般社団法人・財団法人等を歴史的風致維持向上支援法人に認定することができます。支援法人は歴史的風致維持向上施設に係る情報提供や整備事業への参加、関連する土地の取得・管理・歴史的風致形成建造物に関する助言等の業務を行うことができます。また、農業用用排水施設の管理も可能となります。
(10)屋外広告物法の特例(附則第4条)
 都道府県の屋外広告物法に基づく条例制定に関する事務について、認定市町村が実施することができます。
●認定計画に対する特別の措置(各種事業による支援)
(1)歴史的環境形成総合支援事業
 歴史的風致形成建造物について、復原・修理等が支援されます。あわせて実施する重点区域内のハード整備や当該建造物に関連した伝統行事の開催等のソフト事業について、総合的に支援されます。
(2)街なみ環境整備事業
 重点地区または街づくり協定等が結ばれた地区において、協議会活動、建造物の修景、地区公共施設の整備等について、総合的に支援されます。
 歴史的風致形成建造物等については、買収、復原等についても支援されます。
(3)都市公園事業
 古墳、城跡、旧宅等の遺跡及びこれらの復原したもので歴史上または学術上価値の高いものが補助対象施設となります。
 公園管理者以外の地方公共団体及び歴史的風致維持向上支援法人に対しても支援されます。
(4)まちづくり計画策定担い手支援事業
 地権者組織等による都市計画の提案素案の作成を支援することにより、地区計画等の都市計画決定及びこれに基づく建築物の自立的な建替が促進されます。
(5)都市再生区画整理事業
 認定計画に基づく土地区画整理事業地区が重点地区として支援されます。
 歴史的まちなみ形成に資する建築物等の敷地上の従前建築物等の移転補償費が支援されます。
(6)都市交通システム整備事業
 重点区域内の過度な自動車交通の流入を抑制するために設けられるパークアンドライド駐車場などの整備が支援されます。
(7)農村振興総合整備事業、田圃整備事業、地域用水環境整備事業
 歴史的風致維持向上計画に定めた農業用用排水施設の修復(更新)等が支援されます。
(8)まちづくり交付金
 古都及び緑地保全事業、電柱電線類移設等の新たな基幹事業の追加により、市町村の創意工夫をより一層生かした取り組みが支援されます。
●「文化財総合的把握モデル事業」について(平成20年度〜)
 文化庁は、平成20年度より、複数の市町村に実際に歴史文化基本構想(各市町村において文化財を周辺環境も含め総合的に保存・活用していくための構想)の策定を委託し、指針を作成するに当っての方向性や課題を明らかにすることを目的として、「文化財総合的把握モデル事業」を行っています。平成20年度の委託先は20件です。
 このうち、兵庫県内では、高砂市及び篠山市が選ばれています。

(以上は主に、文化庁・国土交通省・農林水産省の「歴史まちづくり法の概要」などを参照)

【 ふるさと文化の創造的伝承『歴史文化遺産活用ガイドライン』 】
 兵庫県教育委員会では、平成18年度に、県内市町が「歴史文化遺産活用計画」を策定する際の手引書として、『歴史文化遺産活用ガイドライン』を作成していました。歴史文化遺産を活用することで、地域の一体感を深め、地域の誇りを醸成し、新たな地域文化を創造することを目指しました。ガイドラインの概要は次のとおりです。
(1)歴史文化遺産の活用:地域おこし、まちづくり、学舎づくり、ふるさとづくりの分野で活用。
(2)活用の主体と役割:歴史文化遺産の活用にあたり、地域住民が主体となって保護・活用を図るためには、NPO法人等、専門機関、行政(市町・県・国)、民間企業等との産官学連携による人材育成や調査研究、活用事業プロデュースの面での支援。
(3)活用計画の策定
<STEP 1 価値の発見>@地域の特性の整理(歴史文化遺産リスト、歴史文化遺産の分布図、地域の歴史文化遺産の特性)
<STEP 2 価値の共有>A活用にあたっての地域の課題の検討、B他分野の計画との整合性の検討、C提示する地域の将来像の検討
<STEP 3 活用の計画>D歴史文化遺産活用計画の策定(地域に共有される記憶、伝承される無形の口頭伝承、あるいは、地域住民からの視点や活動組織などに配慮)
<STEP 4 活用の実践>Eふるさと文化の創造的伝承(歴史文化遺産の有する真実性、時代性、場所性、公共性といった特性を生かす)
 2年先行した兵庫県におけるこのガイドラインの実施が、全国的展開を促す「歴史まちづくり法」に繋がったことは間違いありません。(2009年10月)

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