無形文化遺産の「壬生の花田植」を満喫(広島県山県郡北広島町)
 地域の活性化、まちづくり・まちおこしへの取組み 20)
無形文化遺産の「壬生の花田植」を満喫(広島県山県郡北広島町)
 人々の慣習、描写、表現、知識及び技術、並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間の「無形」のものでも、文化遺産として継承、保護されるべきものとして、ユネスコは、これら「無形文化遺産」を、2006年から「世界遺産」とは別の枠組みで、国際的に保護を進めています。
 現在、日本で登録されているのは、能楽、人形浄瑠璃文楽、歌舞伎、雅楽、京都祇園祭の山鉾行事など20件です。
 2012年6月3日(日)、(世界)無形文化遺産に登録後最初の広島県山県郡北広島町の「壬生の花田植」が15,000人(昨年の約2倍)を迎えて繰り広げられました。
 北広島町の地域振興活動・街おこしを指導している方の仕事仲間ということで、ご招待をいただき、中国自動車道で約3時間、広島と島根の県境にある千代田ICまで駆けつけて、この貴重な伝統文化の世界遺産を満喫してきました。
 街中の壬生商店街で道行(行進・演技披露)が、壬生の子ども田楽、本地花笠踊り、飾り牛、壬生田楽団、川東田楽団が練り歩きました。市内の花田植の会場でも引き続き、壬生小金管バンド、子ども田楽、本地花笠踊りが繰り広げられ、遂に本番の盛り上がりを図るかのように飾り14頭の入場と代掻き、そして、本番の花田植の公開と続きました。
 各役割の紹介アナウンスをバックに田楽団の入場、会場に田植歌が響き渡り、さあ、始まりです。ささら竹を手にした「サンバイ」役の掛け声のもとに、大太鼓や小太鼓、手打ち鉦(かね)や笛でにぎやかな囃し方、十数人の早乙女が田植え歌を歌いながら田植えをし、飾り立てた飾り牛も十数頭が出て、豪華絢爛たる一大田植え絵巻が繰り広げられました。

(豪華な飾り牛14頭による迫力ある代掻き。博労には若い人もお年寄りも)

(大太鼓に飾り撥で整列する田楽団の囃子方。足元のぬかるむ田中で、かなり激しい囃しを演じる)

(田植歌を唱しながら、揃って苗を植えて行く早乙女さんたち)


(世界遺産登録後初の花田植なので、TV中継、写真家たちの取材の嵐。市中につき、観客席は極端に少ない

※注目すべきところは、
@ 豊作と安全を願う農工行事「囃し田」を行う「田楽団(飾り牛・立人・囃子方・早乙女)」
・花鞍に幟(のぼり)を立てた迫力満点の「飾り牛」の代掻き。
・サンバイの親歌を引き取って、早乙女が子歌をうたうかけ合いの「田植歌」。
・苗運び、綱引きさんの「立人」。
・田の神様三拝さんを演じ全体を仕切る「サンバイ」、大太鼓・小太鼓・笛・手打ち鉦(かね)の「囃子方」。
・紺の着物にたすきかけ美しく装った「早乙女」さんたちの田植え。
A 花鞍に幟(のぼり)を立てた迫力満点の「飾り牛」の代掻き。
※「壬生の花田植」の由来といえば、
@広島県北西部の農村地帯には、古くは中世の頃から「囃し田(はやしだ)」と呼ばれる行事が伝えられています。
A江戸時代後期から明治時代にかけて、大地主の田で行なわれた「大田植え」は、昭和になる頃、残念ながらいったん消滅してしまいました。が、その後「壬生の囃し田」「川東の囃し田」が再興されました。そのころから花やかで美しい田植えという意味で「花田植」と呼ばれるようになりました。
Bこの2つが一緒になって、昭和51年に「壬生の花田植」として国の重要無形民俗文化財に指定。その後、保存伝承に努めて、35年後の昨年11月、世界が注目するユネスコの(世界)無形文化遺産として登録されました。
 戦後の1950年代半ばからはじまる(昭和30、40年代の)高度経済成長期を境に、農業の機械化や農薬利用が急速に進んだ目本の現代農村社会にあって、先人たちが伝えていた牛の代掻き(しろかき)や、早乙女の田植えなどの貴重な生業技術が、古風を伝える田植え歌や楽器の囃しなどの民俗芸能とともに、田の神さまに象徴される自然環境の恵みへの祈りと感謝の精神と、みごとに調和して保存伝承されていることが高く評価されたからにほかなりません。
 この保存伝承活動も幅広く、田楽団には「子ども田楽団」もあって、小学生から80歳をこえるお年寄りも頑張っています。もちろん、親子や、夫婦もあって、地域の全世代を挙げて活動している様子は、都会ではちょっとみられない、羨ましい限りのコミュニティです。

 既に全国からの問合せが殺到しており、これからは、受け入れ体制の整備が急務となりそうです。急増する全国からの観客たちを如何に地域の賑わいに繋げるか。
 飾り牛の養育と調教、駐車場対策や観光客誘導、資料館での展示等の充実整備、併設常設の関連イベント・関連商品の開発、宿泊プラン等充実、町を挙げての協力支援体制拡充など、ひと時のお祭りに終わらせること無く、常時の受入を考慮して、(世界)無形文化遺産を核とした地域振興に取り組んで行かれることでしょう。(2012年6月)

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