観光ボランティアガイドさん(ニューツーリズムの担い手)に期待すること
 (ツーリズム政策と提言 8)

観光ボランティアガイドさん(ニューツーリズムの担い手)に期待すること


遺跡の前で解説するボランティアガイドさん
●観光を取り巻く情勢の変化
 昔の「観光」といえば余暇の活用・遊びのイメージでしたが、最近では、ビジネス旅行やイベントや会議などもトータルとして考えるようになって、観光の概念が広がり、それらをひっくるめた「ツーリズム」という表現が主流です。ツールとは動き回る、旅する=移動、交流(広い範囲)することです。
 また、経済社会の成熟・広域化と生活スタイルの移り変わりなどから、観光の形態が変化してきました。人々の生活行動は、経済追求一辺倒から、ゆとりや心の拠り所を求めています。これらが、健康志向、自然志向、美食志向(無害、健康)、懐古志向、知識志向、歴史・郷土史志向、田舎暮らし志向など。
 当然、旅行等市場の対象(ターゲット=ツーリズムの主人公)も変遷します。若者たちからシニア・アラフォーたちふぁ主役です。若者たちといえば、少子化、厳しい経済雇用環境など、ゆとりと離れた生活を余儀なくさせられていないでしょうか。それに比べ、シニアと称される人たちは、50歳以上とすると人口の半分(人口ピラミッドの変遷)を占めます。この大人数が働くことを続けたり、旅行に向っているのです。
  いわゆる発地型観光(お仕着せ、パターン化)、マスツーリズム、マスツーリズムから、着地型観光(地域主導のツーリズム)への動きが顕著になってきました。それだけに、各地域が積極的にこれらの情勢の動向を踏めて受け入れ体制を確立することが大切になっています。
【参考リンク先】
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(11)観光資源の掘り起こしと工夫によるまちおこし
【参考】アクティブ・シニアたちの動向
・旅行(国内、海外、郷土、温泉、クルーズなど)
・健康志向・自然志向(病院・ドックツアー、エステ、ダイエット、エクササイズ、サプリメント、温泉、田舎暮らし、貸し農園、クラインガルテン、登山、山歩き、ウォーキング、ジョギング、ランニング、ドライブ、バイクツーリング、サイクリング、水泳、ゴルフ、テニス、ボーリング、クルーザー・ヨットなど)
・美食志向(食歩き、郷土料理、グルメ、B級グルメ、酒、ワインなど)
・知的志向(音楽、合唱、オペラ、劇、ご当地検定、書道、俳句、歌舞伎、能・狂言、詩吟、パソコン、HP、ブログ、メール、映画・DVD、カメラ、骨董、ルーツ探し、講座、老人大学、クラブ活動、歌声喫茶、囲碁・将棋・チェス・カードゲーム・麻雀、手品など)
・懐古・歴史・郷土史志向(世界遺産、巡礼、郷土史、寺社、仏像、祭り、近代化遺産、
・ボランティア(観光ガイド、海外技術指導者、災害援助、林業、介護、経営相談・カウンセリング、自治会、防犯・消防団、地域おこし、賑わいづくりなど)

各コースに分かれて、ガイドさんの案内申込みの受付状況
●観光ボランティアガイドさんの役割
 観光動向の変化に対して、これに併せて、地域の受け入れ体制の整備が進められようとしていますが、特に、着地方観光の主人公であり、ニューツーリズムの担い手として期待されている観光ボランティアガイドさんたちの役割が重大になっています。
   @まずは、役所・団体がリーダーシップを執る。
   Aボランティアの養成(役所主催講座、生涯教育、地域おこしグループ)。
   B地域(住民)全体の理解が必要。
   Cビジネスモデルと成り得るか。

観光ボランティアガイドさんたちの研修

古い言い伝えなどを語り部さんから聞く
※ 観光ボランティアガイドさんが地域の宝となる条件
・ 地域の住民が歓迎し、ガイディングへの賞賛・理解。
・ 行政に対等に意見し、行政もその意見を汲み上げ評価する。
・ 郷土への誇りと愛情を持ち、自己研鑽に務め、観光客(ツーリスト)の喜びが自分の喜びとなり、ガイディングがやり甲斐のホスピタリティを持つ。
※ 観光で「まちおこし等」を目指す地域(自治体)の協力
 観光地の施設や道路の整備のみならず、まちおこし等を推進するリーダーたちの要請、ボランティアガイドさんたちや地域住民全体のホスピタリティの向上、ガイド養成プログラムの推進などへの予算や施策が必要です。
●観光ボランティアガイドさんに期待する
 観光ボランティアガイドさんに目指してほしいもの、こうあるべき・これが望ましいことは、なにも何でも知っている絶対的スーパーマン・スーパーレディになることではなく(理想だが無理)、各ご自分の特徴を発揮することです。(分野、学識、よもやま話、言葉、手話、笑顔、気配りなどなど)
 また、自分の健康管理ため、自己研鑽の一環であると心掛け(マイペースを守る、無理をしない)、もちろん、仕事としての応接ではなく友好交流なのです。
(1) そのためには、意識の改革が望まれます。
@観光ボランティアガイドさんは説明マシン・看板ではありません。
Aホスピタリティこそが第一義です。(接待の主役ホスト、旅館のおかみ、子供さんの婚約者が初めて自宅を訪問する時のご両親)
B観光施設が良かった → ガイドさんの説明が良かった → ファン獲得 → 観光カリスマ
C観光ボランティアさん自身も観光資源(地域の宝)なのです。
Dまちづくりの一翼を担っていること。
  (集まってくる意見・反応・困ったことなどをまとめて町当局等へフィードバックする仕組みを作ってください。)

郷土の歴史を語るボランティアガイドさん
※ 観光ボランティアガイドさんのつぶやき(兵庫県約900名のガイドさんアンケート調査)
@ ボランティアガイドの動機
地域の事を勉強し、もっと知りたい。歴史好きでリタイヤ後に郷土史に着手。仲間づくり、ボランティアが楽しそう。折角覚えた地域の歴史や文化を伝えて喜んでもらえれば自分も嬉しい。
A ボランティアガイドをして良かったと思うとき
お客様からのお礼や手紙が来たらやりがいを感じる。熱心に耳を傾けて、ぱっと輝く顔が見られた。下調べや本番で外出できるので心も体にも良い。同じ興味の仲間と知り合えて、共に勉強し討論したりする。観光客と仲良くなり、こちらが訪ねて行ったり交流が生まれた。
B 困ったこと
旅行会社が急に時間を変更・短縮したりで案内の手順が狂う。年配者の多い旅行者のための休憩施設の整備(自分たちは慣れている)。交通費程度の有料ボランティアガイドにもタダではと苦情を言う人がいる。
(2) ガイドをされる時の勘所といえば、
@グループの属性・目的を見極めたガイド方針の決定と実施。そして、そのグループの反応に併せて話題・レベルを変更するといった臨機応変な新しいガイド方針が必要です。
A知識よりも話題中心、話のネタのレベルの見極め(教養番組かバラエティ番組か)。
B地域の生活模様なども関心事。
C観光施設の価値は由来・ランキングを知ってこそ認識される。
Dグループの行動パターンに配慮する。(障害者、車椅子、歩調、赤ちゃん連れなど)
E急傷病者への緊急対応。(携帯電話連絡、バンドエイド等の傷の手当てなど)
F初対面・別れ際の好印象。(心に残るお見送り)
G詳細説明用のパネル(紙芝居型)を用意・持参して行くのも好結果。(即問即答、深い説明はパネルを示しながらでもOK)

古民家で郷土史を語るボランティアガイドさん
(3) 用意しておく情報、おさえておきたい話題(広く一般的)としては、
@お手洗い、一押しの土産物と土産物屋さん、産地農産品直売所、朝市、絶景の撮影地点と角度、観光パンフレットの入手方法、郷土料理の食べられる店、最寄り駅や目的地への移動方法、病院・診療所など
A昔の生活(子供の頃の思い出)、ものづくり(郷土の特産)、文化財・近代化遺産、郷土のまつり、田舎暮らし(空き家、貸別荘、貸し農園)
B関連古文書の存在、民間伝承、郷土料理、郷土の季節の花、将来の生活(まちづくり)、地元の偉人(有名・無名・話題の人ほか)など

                                     (2011年7月〜、2015年1月)

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