ユネスコ無形文化遺産の登録を目指して
 (ツーリズム政策と提言 9)

ユネスコ無形文化遺産の登録を目指して   

 文化遺産や自然遺産の「有形」遺産については、現在、「世界遺産」として1972年から約1,000件が登録、保護されている。しかし、人々の慣習、描写、表現、知識及び技術、並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間の「無形」のものでも、文化遺産として継承、保護されるべきものとして、ユネスコは、これら「無形文化遺産」(世界無形文化遺産とは言わない)の国際的に保護するため、2006年から「世界遺産」とは別の枠組みで、保護条約の締結国を募って進めています。
1. ユネスコ無形文化遺産保護条約(2006年)の目的
@ 無形文化遺産を保護する。
A 関係のある社会、集団及び個人の無形文化遺産を確実に尊重する。
B 無形文化遺産が重要で、さらに無形文化遺産に対する相互理解を確実に深めることが重要であるという意識を地域的、国内的及び国際的に高める。
C 国際的な協力及び援助についての規定を設ける。

(左写真:日本の無形文化遺産登録、第1号の「能楽」)
2. 無形文化遺産の分野
@ 口承による伝統及び表現(伝達手段としての言語を含む)
A 芸能
B 社会的慣習
C 儀式及び祭礼行事
D 自然及び万物に関する知識及び慣習
E 伝統的工芸技術 など
3. 登録される一覧表
@ 人類の無形文化遺産の代表的な一覧表(代表一覧表)
A 緊急に保護する必要のある無形文化遺産の一覧表(緊急一覧表)
4. 登録への手続き
@ 条約締結国の政府から、登録を希望する案件を提案・推薦する。
A ユネスコ内に無形文化遺産に関する「政府間委員会」が設けられ、また、その下部に事前審査のための補助機関に3月頃に案件の優先順位を付して申請提出する。
B 補助機関で6月頃に審査され、結果が政府間委員会に報告される。
C 条約締結国のうち24カ国で構成する政府間委員会が11月頃に開催され、協議及び最終的な評価を行い、一覧表登録の可否を決定する。
5.「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」公表案件の統合
 無形文化遺産の登録制が発足する前の2001年から、ユネスコでは、歴史、芸術、民族学、社会学、人類学、言語学又は文学の観点から、たぐいない価値を有する民衆の伝統的な文化について、優れたものを「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」(傑作宣言)として公表した。これら90件分を、無形文化遺産の第1回目の代表一覧表作成時(2009年)に、吸収統合した。
6.一覧表登録の無形文化遺産
 世界では、危機リスト(緊急保護リスト)に16件、代表リストに213件、合計229件が登録(2010年11月)されていました。
 日本からは、21件の無形文化遺産が登録されています。(2016年12月)
登録年
遺産の名称
関係地域
分野
保護団体、又は所属機関・団体
2001
能楽 伝統芸能 (社)日本能楽会 
2003
人形浄瑠璃文楽 伝統芸能 人形浄瑠璃文楽座
2005
歌舞伎  伝統芸能 (社)伝統歌舞伎保存会 
2009
雅楽  伝統芸能 宮内庁式部職楽部 
2009
小千谷縮(おぢやちぢみ)  新潟県 工芸技術(染織) 越後上布・小千谷縮布技術保存協会
2009
越後上布(えちごじょうふ)  新潟県  工芸技術(染織) 越後上布・小千谷縮布技術保存協会
2009
甑島(こしきじま)のトシドン  鹿児島県薩摩川内市下甑町  民俗  甑島トシドン保存会 
2009
奥能登のあえのこと  石川県珠洲市、輪島市、鳳珠郡能登町及び穴水町  民俗  奥能登のあえのこと保存会 
2009
早池峰神楽(はやちねかぐら)  岩手県花巻市  民俗  早池峰神楽保存会、大償神楽保存会、岳神楽保存会
2009
秋保(あきう)の田植踊 宮城県仙台市太白区秋保町 民俗  秋保の田植踊保存会、湯元の田植踊保存会、長袋の田植踊保存会 
2009
チャッキラコ  神奈川県三浦市三崎  民俗  ちゃっきらこ保存会 
2009
大日堂舞楽  秋田県鹿角市八幡平  民俗  大日堂舞楽保存会 
2009
題目立(だいもくたて)  奈良県奈良市  民俗  題目立保存会 
2009
アイヌの古式舞踊 北海道札幌市、千歳市、旭川市、白老郡白老町、勇仏郡むかわ町、沙流郡平取町、沙流郡日高町、新冠郡新冠町、日高郡新ひだか町、浦河郡浦河町、様似郡様似町、帯広市、釧路市、川上郡弟子屈町及び白糠郡白糠町  民俗  北海道アイヌ古式舞踊連合保存会、札幌ウポポ保存会、千歳アイヌ文化伝承保存会、旭川チカップニアイヌ民族文化保存会、白老民俗芸能保存会、鶴川アイム無形文化伝承保存会、平取アイム文化保存会、紋別ウタリ文化保存会、新冠民族文化保存会、静内民族文化保存会、三石民族文化保存会、浦河ウタリ文化保存会、様似民族文化保存会、帯広カムイトウウポポ保存会、春採アイヌ古式舞踊釧路リセム保存会、弟子屈町屈斜路古丹アイヌ文化保存会、阿寒アイヌ民族文化保存会,白糖アイヌ文化保存会 
2010
組踊  沖縄県  民俗  伝統組踊保存会 
2010
結城紬(ゆうきつむぎ)  茨城県、栃木県  工芸技術(染織)  本場結城紬技術保存会 
2011
佐陀神能(さだしんのう) 島根県 民俗  佐陀神能保持者会 
2011
壬生(みぶ)の花田植  広島県  民俗  壬生の花田植保存会
2012
那智の田楽 和歌山県  民俗  那智の田楽保存会 
2013
和食 日本人の伝統的な食文化   工芸技術(その他) 和食文化国民会議
2009

2014
変更
和紙 日本の手漉き和紙技術(わし にほんのてすきわしぎじゅつ)  埼玉県、岐阜県、島根県 工芸技術(その他) 細川紙技術保存会、本美濃紙技術保存会、石州半紙技術者会
( 「石州半紙」は2009年登録済み分をグループ化)
(2009)

2016
変更
山・鉾・屋台行事 18府県33 民俗 33件は下記のとおり
(「日立風流物(ひたちふりゅうもの)」、「京都祇園祭の山鉾行事 」は2009年登録済み分をグループ化)
7.登録を目指す候補(日本国内)
(1)フランス料理などのように、無形文化遺産登録に向けて、@四季や地理的多様性による新鮮な山海の幸、A自然の美しさを表した盛り付け、B正月や田植えなどとの密接な関係を強調した 「和食、日本人の伝統的な食文化」が、アゼルバイジャンのバクーで開催された2013年12月のユネスコ政府間委員会において正式に無形文化遺産への登録が決定されました。これで、国内の無形文化遺産登録は22件となりました。
(2)また、「細川紙」(埼玉県)と「本美濃紙」(岐阜県)、「石州半紙」(島根県)(2009年登録済み)の3つをまとめて、「和紙、日本の手すき和紙技術」として2013年にユネスコに提案書を提出した。
 現在、下記の案件を継続的に提案・推薦することとしております。
@ 男鹿のナマハゲ(秋田県)
A 綾子踊(あやこおどり)(香川県)
B 諸鈍芝居(しょどんしばや)(鹿児島県)
C 多良間(けらま)の豊年祭(沖縄県)
D 建造物修理・木工(財団法人文化財建造物保存技術協会)
E 木造彫刻修理(財団法人美術院)
(3)ユネスコから、各国からの申請提案を原則として年1件にするようにとの要請があり、文化庁としては、共通した特徴を持つ日本の祭りを包括した「山・鉾・屋台行事」として、既に無形文化遺産に登録されている「京都祇園祭の山鉾行事(京都府)」や「日立風流物(茨城県)」を含む計18府県33の国の重要無形民俗文化財の祭りを一括提案することを決めました。2016年のユネスコ政府間委員会での登録を目指しています。(2013年3月)
(4)2014年10月、ユネスコの補助機関が「和紙、日本の手すき和紙技術」の登録勧告を行いました。同年11月27日のフランス・パリで開催されたユネスコ政府間委員会で正式決定されました。
 現在22件の無形文化遺産が登録されていますが、細川紙、本美濃紙、石州半紙の3つをまとめた「和紙」は、単独だった「石州半紙」を拡張・名称変更になるため、件数は変わりません。(2014年11月)
(5)神戸出身の書家の呼びかけから、2015年に入って、日本書道ユネスコ登録推進協議会が1月に発足、「かな書道」を無形文化遺産に登録しようとする活動が始まっている。かな書道には、優美で繊細な魅力があり、日本古来の文学の魅力を支え、日本人の心が込められているとし、昨年11月には文化庁に要望。登録に向けて、本格的に動き出している。(2015年6月)
(6)全国各地でみられる来訪神行事については、2009年に「甑島(こしきじま)のトシドン」が登録されましたが、2011年「男鹿のナマハゲ」は類似行事として認められませんでした。文化庁や地元自治体は、この登録済の「甑島(こしきじま)のトシドン」に全国8箇所(下記※)の来訪神行事をグループ化して、「来訪神 仮面・仮装の神々」として一括登録にしてもらう手法を採ることとしました。2014年には、8行事9市町が全国協議会を発足させ、2016年のユネスコ提案に持ち込みたいとして活動しています。(2016年2月)
※吉浜のスネカ(岩手県大船渡市)、米川の水かぶり(宮城県登米市)、男鹿のナマハゲ(秋田県男鹿市)、遊佐の小正月行事(山形県遊佐町)、能登のアマメハギ(石川県輪島市、能登町)、見島のカセドリ(佐賀県佐賀市)、甑島のトシドン(鹿児島県薩摩川内市)、宮古島のパーントゥ(沖縄県宮古島市)
 
(7)ユネスコは、登録数の抑制のため、年間の審査件数を50件以内と決めており、登録数の多い中国や日本よりも登録の少ない国を優先しています。それで日本は、登録数を増加させないで他の類似遺産を統合する手法で申請を進めています。
 既申請済みの
「山・鉾・屋台行事」(18府県、33件)は、2016年10月の補助機関の評価・勧告に基づき、11月末のエチオピアで開催される政府間委員会で登録が決まることがほぼ確実となった。
 また、「来訪神 仮面・仮装の神々」(8県、8行事)は、2018年の登録に向けた審査が予定されています。 (2016年11月)
(8)ユネスコは、政府間委員会を開催し、2016年12月、「山・鉾・屋台行事」(18府県、33件)の無形遺産登録を決定した。これにより、日本の登録件数は、既登録2件を包括して1件登録されるので、全体で21件となりました。(2016年12月)
【「山・鉾・屋台行事」に包括されている33の祭り】
@八戸三社大祭(青森県)、A角館祭(秋田県)、B土崎神明社祭(秋田県)、C花輪祭(秋田県)、D新庄まつり(山形県)、E日立風流物(ふりゅうもの)(茨城県)※2009年登録済み、F烏山の山あげ(栃木県)、G鹿沼今宮神社社祭(栃木県)、H秩父祭(埼玉県)、I川越氷川祭(埼玉県)、J佐原の山車(千葉県)、K高岡御車山(みくるまやま)祭(富山県)、L魚津のタテモン(富山県)、M城端神明宮祭(富山県)、N青柏祭(せいはくさい)(石川県)、O高山祭(岐阜県)、P古川祭(岐阜県)、Q大垣祭(岐阜県)、R尾張津島天王祭(愛知県)、S知立の山車文楽とからくり(愛知県)、(21)犬山祭(愛知県)、(22)亀崎潮干祭(愛知県)、(23)須成祭(愛知県)、(24)鳥出神社の鯨船(三重県)、(25)上野天神祭(三重県)、(26)桑名石取祭(三重県)、(27)長浜曳山祭(滋賀県)、(28)京都祇園祭(京都府)※2009年登録済み、(29)博多祇園山笠(福岡県)、(30)戸畑祇園大山笠(福岡県)、(31)唐津くんち(佐賀県)、(32)八代妙見祭(熊本県)、(33)日田祇園(大分県)
  現在、文化庁がユネスコに提案した中には、兵庫県ゆかりの深いものはありません。しかし、県内にも古くから国の重要無形(民俗)文化財に指定(淡路人形浄瑠璃、車大歳神社の翁舞、上鴨川住吉神社神事舞など)されているものは少なくありませんが。是非、早急に当該文化財にかかる資料の整備、保存体制の確立、地域の意識向上と盛り上がりを図って、文化庁への一層のプロモーション、県指定文化財の国指定の重要文化財指定への昇格活動などを期待します。
(2012年3月〜、2016年11月)

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