世界農業遺産・日本農業遺産の認定を目指す
 (ツーリズム政策と提言 15)

世界農業遺産・日本農業遺産の認定を目指す  

世界農業遺産
 世界的に固有の農業システムや景観は、地元に適合した管理手法を用い、また、多様な自然資源に基づき、何世代もの農民や遊牧民によって生み出され、形づくられ、維持されてきた。地元の知識と経験に基づきながら、これらの独創的な農文化的システムは人類の進化、知識の多様性、自然との深遠な関係を反映させています。これらのシステムは優れた景観、世界的に重要な農業的生態系の多様性の維持と適応、土着の知識システム、回復力に富む生態系をもたらしてきただけでなく、とりわけ多角的な商品やサービスの継続的な提供、食と暮らしの安全、そして生活の質をもたらしてきました。
 これら貴重なものを、国連食糧農業機関(FAO=Food and Agriculture Organization of the United Nations)は世界重要農業遺産(GIAHS=Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定して、世界の農文化的遺産システムの保護・支援する体制を主導的に構築しました。
一般的には、世界重要農業遺産を略して「世界農業遺産」と呼んでいます。
1.世界農業遺産の認定
 世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農業システムが認定されます。
2.認定基準
 世界的(国家的)重要性(下記の5基準)、歴史的及び現代的重要性を有すること。
@食料及び生計の保障、A生物多様性及び生態系、B知識システム及び適応技術、C文化、価値観及び社会組織、D優れたランドスケープ及び土地と水資源管理の特徴
3.申請から認定まで
 協議会等が申請者となり、@地方農政局等との連絡・調整・情報提供を受けて学術機関や都道府県との連携・協力で申請書を作成、A農林水産省へ承認申請、B農林水産省は専門家会議にかけて国内評価を固め、承認されれば、CFAOへの認定申請、D書類審査及び現地調査を経て認定の運びとなる。
4.最近の動向
(1)農林水産省は、2017年3月、世界農業遺産に申請する3地域を決定した。日本農業遺産に認定した8地域のうち、 「宮城県大崎地域の稲作」(宮城県大崎地域)、「静岡県のワサビ栽培(静岡県)、「徳島県西部の急傾斜地農法」(徳島県つるぎ町など)。2017年中に申請する。
(2017年3月)

(2)
「“大崎耕土”の巧みな水管理による水田システム」(宮城県大崎地域)が世界農業遺産に認定されました。(2017年12月)
(3)「静岡水わさびの伝統栽培(静岡県わさび栽培地域)、「にし阿波の急傾斜地農耕システム」(徳島県にし阿波地域)が世界農業遺産に認定されました。(2018年3月)
(4)農水省は、「盆地に適応した山梨の複合的果樹システム」(山梨県峡東地域)、「琵琶湖の伝統的漁業」(滋賀県琵琶湖地域)、「美方地域の但馬牛飼育」(兵庫県美方地域)の3地域を国連食糧農業機関(FAO)が認定する世界農業遺産に申請することを決めた。(2019年2月)
●認定された世界農業遺産(2018年12月)
 現在では、21カ国57地域が認定されています。
 地域別でみると、欧州3カ国6地域(イタリア1、スペイン3、ポルトガル1)、中東2カ国4地域(チュニジア1、イラン3)、アフリカ6カ国8地域(モロッコ2、アルジェリア1、エジプト1、ケニア1、タンザニア1、UAE1)、アジア7カ国36地域(日本11、中国15、韓国4、バングラディシュ1、インド3、スリランカ1、フィリピン1)、中南米3カ国3地域(メキシコ1、ペルー1、チリ1)が認定されています。
●日本の世界農業遺産(2019年2月)
@「トキと共生する佐渡の里山」(新潟県佐渡市)2011年
A「能登の里山里海」(石川県能登地域)2011年
B「静岡の茶草場農法」(静岡県掛川周辺地域)2013年
C「阿蘇の草原の維持と持続的農業」(熊本県阿蘇地域)2013年
D「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」(大分県国東半島宇佐地域)2013年
E「清流長良川の鮎」(岐阜県長良川上中流域)2015年
F「みなべ・田辺の梅システム」(和歌山県みなべ・田辺地域)2015年
G「高千穂郷・椎葉山地域の山間地農林業複合システム」(宮崎県高千穂郷・椎葉山地域)2015年
H 「“大崎耕土”の巧みな水管理による水田システム」(宮城県大崎地域)2017年
I)「静岡水わさびの伝統栽培」(静岡県わさび栽培地域)2018年
J「にし阿波の急傾斜地農耕システム」(徳島県にし阿波地域)2018年
日本農業遺産
 日本では、現在も伝統的で多様な農林水産業が営まれ、美しい田園風景、でんとうある故郷、助け合いの農村文化が守り続けられています。農林水産省は、将来に受け継がれるべき伝統的な農林水産業システムを広く発掘し、その価値を評価するため、2016年度から新たに「日本農業遺産」制度を創設しました。
1.日本農業遺産の審査
 世界農業遺産と同様に、農林水産省へ審査養成をする。脳裏水産省は専門家会議に審査を要請、その評価を受けて認定等の作業を行う。評価結果は、@日本農業遺産認定と世界農業遺産への申請承認、A日本農業遺産に認定するが世界への申請は承認せず、B日本農業遺産に認定しないが世界への申請を承認する、C日本農業遺産に認定せず、世界への申請も承認せず、の4つのパターン。
2.認定基準
@世界農業遺産と共通の認定基準(世界的および国内的重要性、歴史的重要性、現代的重要性)
A日本農業遺産独自の基準(自然災害や生態系の変化に対する回復力、多様な主体の参加、6次産業化の推進)
3.認定に期待される効果(多様な主体の参画による地域活性化)
@地域固有の農林水産業の継承、A観光客誘致、Bきぎょうとの連携、C農林水産物のブランド化、D地域住民の自信と誇りの創出 など、多様で地域性に富む、日本の伝統的な農林水産業が支援される。
4.公募及び申請・認定
@ 平成28年度は4月〜9月に募集があり、15県19件の応募があった。兵庫県関係では1件、「南あわじ地域における伝統的多毛作体系」兵庫県南あわじ市南あわじ地域)(南あわじ地域世界・日本農業遺産推進協議会)。平成29年3月の農林水産省の専門家会議の審査を経て、7県8地域が日本農業遺産に認定された。兵庫県の候補は認定されなかった。(2017年3月)
A農水省は、兵庫県の「美方地域の但馬牛飼育」(兵庫県美方地域)など7県7地域を日本農業遺産に認定した。 (2019年2月)
●認定された日本農業遺産(2019年2月)
@ 「“大崎耕土”の巧みな水管理による水田システム」(宮城県大崎地域)2016年
A「静岡水わさびの伝統栽培」(静岡県わさび栽培地域)2016年
B「にし阿波の急傾斜地農耕システム」(徳島県にし阿波地域)
2016年
C「武蔵野の落ち葉堆肥農法」(埼玉県武蔵野地域)2016年
D「雪の恵みを生かした稲作養鯉システム」(新潟県中越地域)2016年
E「盆地に適応した山梨の複合的果樹システム」(山梨県峡東地域)2016年
F「鳥羽・志摩の海女漁業と真珠養殖業」(三重県鳥羽・志摩地域)2016年
G「急峻な地形と日本有数の多雨が生み出す尾鷲ヒノキ林業」(三重県尾鷲市、紀北町)2016年
H「琵琶湖の伝統的漁業」(滋賀県琵琶湖地域)2018年
I 「美方地域の但馬牛飼育」(兵庫県美方地域)2018年
J 「紅花の生産、加工」(山形県最上川地域)2018年
K 「生物多様性を保全する伝統漁法」(福井県三方五湖地域)2018年
L 「貯蔵庫でミカンを熟成させる技術」(和歌山県海南市下津地域)2018年
M 「鉱山跡地を再生した棚田」(島根県奥出雲地域)2018年
N 「急斜面かんきつ栽培」(愛媛県南予地域)2018年

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