採石場跡の自然景観を回復させた“ブッチャート・ガーデン”(カナダ)
 
ツーリズム関連のレポート・エッセイ集 9)
採石場跡の自然景観を回復させた“ブッチャート・ガーデン”(カナダ)
淡路島関空用土採り跡復活再生のためのモデル調査概要(1993年)より
 関西国際空港を造成する際に、対岸の淡路島北部の斜面から埋め立て用土砂が運び込まれ、採掘跡地は荒涼とした光景をさらけ出していました。
 このような大量の土砂採掘跡や鉱山跡を自然を再生した事例が100年前のカナダにあります。 カナダのブリティッシュ・コロンビア州のヴィクトリア市の15メートルも掘り下げられたセメント用石灰石採取場跡を1904年からコツコツと植物園へ公園化した「ブッチャート・ガーデン」、淡路の土採り跡を修景するモデルとしたい公園です。
 セメント工場の経営者夫人のジェニー・フォスター・ブッチャートが家の傍に友人から贈られたスイトピーとバラ等の花を植えたことが、世界的に有名な造園となる第一歩でした。
 その後、ブッチャート一家は庭園を整備続け、素晴らしいガーデンの評判も拡がって、多くの人々が訪れました。
 テニスコートがイタリアンガーデンになり、1930年にロスガーデン、温室が加わり、日本のサクラ566本の並木が出来上がりました。第二次大戦に入り、1943年にブッチャート氏、1950年に夫人も亡くなりましたが、夫妻の孫息子、イアン・ロス氏が後を引き継ぎ、大戦で閉鎖同然だった庭園の復活に努力されました。
 1964年開園60周年記念にロス噴水を設け、野菜畑を野外ステージに造り変えてきました。

「ブッチャート・ガーデン」の見事に再生したサンクンガーデンを見下ろす

カナダのブリティッシュコロンビア州、ヴィクトリア市
  誕生から100年以上を経過し、ブッチャート家の園芸による私的歓迎に始まった22ヘクタールにも及ぶ広大な花園公園には、毎年100万人以上が来訪しています。そして、2004年にカナダの国家史跡に指定されています。
 園内は、サンクンガーデン(低底庭)、ローズガーデン、日本庭園、イタリアンガーデン、地中海庭園の5つの中心的なエリアに分かれ、手入れの行き届いた芝生やパスが繋いでいます。3月から10月まで途切れることなく咲き乱れる花々、冬のクリスマスイルミネーション、スケートリンクも加わり、四季を通じての一年中楽しめます。
 訪れた誰もが、これがあの殺伐とした採石場跡だったと想像することさえ困難な「ブッチャートガーデン」は、自然回復の究極の未来図であります。

入口ゲート前の看板

ガーデンを見下ろす

ダイニングルームの外の庭園広場

日本庭園

ダイニングルーム前のバラ園

何と綺麗なサンクンガーデン
 淡路島の関西空港埋め立て用土採り跡は、国際会議場・ホテルなどの「夢舞台」や国立淡路島公園となって、2000年3月から9月に「国際園芸造園博覧会(ジャパン・フローラ)」を開催、自然景観を取り戻したモデルとして有名です。

石灰岩を採掘した跡の状況(1912年)

ブッチャート夫妻の屋敷のダイニングルーム

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