丹波竜へのいざない・丹波はジュラシックパークだ
〜恐竜化石大発見とその後の調査研究成果!〜

  (郷土史にかかる談話 6、17)


恐竜化石が発見された川代渓谷
1.恐竜化石大発見!
(1)  2007年の元旦、新春朝刊に丹波地域(丹波市山南町)で恐竜の化石が発見されたとの読者お年玉記事は、恐竜ファンのみならず、郷土史ファン・ツーリズム振興による地域活性化を思う人たち(私も)に大きな期待・初夢をもたらしたのです。
 次いで1月3日、兵庫県立人と自然の博物館(三田市)により、発見状況や恐竜化石の概要等について緊急の記者会見が行われました。
(2) その前年2006年8月7日午後、加古川水系篠山川の川代渓谷(丹波市山南町上滝)に生痕化石を追い求めていた地元の足立氏と村上氏(共に丹波市在住)が、篠山層群と言われている中生代白亜前期(1.4億〜1.2億年前)の泥岩層の表面付近に珍しい化石を発見。どう見て調べても恐竜の化石であると思えたので、翌8日9日と発掘を進め、その9日午後3時頃に棒状の化石等を近くの兵庫県立人と自然の博物館に持ち込みました。博物館の三枝主任研究員の鑑定を仰いだ結果は、やはり恐竜の骨とのこと。急遽、発見場所に出向いて状況を確認、篠山層群からは初めての恐竜化石の産出である。

泥岩層の表面附近で発見された恐竜化石
(レプリカ)
【篠山層群とは】
 篠山市の篠山盆地、丹波市山南町東部に分布する白亜紀前期の陸成層で、古生代ベルム紀から中生代ジュラ紀にかけて形成された基盤岩類を覆う形で分布。下部層と上部層に分けられています。丹波市に分布する篠山層群は全て下部層とされています。分布域の西部では、篠山層群より新しい白亜紀後期の火山噴出物が中心の有馬層群に覆われています。
 丹波(篠山盆地、山南町東部)の篠山層群下部層は、主に、篠山市の川代、味間、宮田、黒田、東吹、熊谷、沢田、新荘、瀬利、今谷、春日江の周辺に、丹波市山南町では上滝、下滝、阿草の周辺に分布しています。
 篠山層群の地層年代は、これまでは1992年の測定結果に基づいて約1億4,000万〜1億2,000万年前(中生代前期白亜紀)としてきましたが、2010年8月、兵庫県内の研究者による最新方法での測定により、3,000万年ほど新しい、1億1,500万年〜9,700万年前と推測し、約1億1,000万年前を目安とすることとされました。
(3)  翌10日に博物館から3名が試掘を実施、採取した10数点の化石に約2か月かけてクリーニング作業を施し、その骨類は、草食恐竜ティタノサウルス類の化石及び獣脚類の歯と想われた。
 そこで関係機関を交えた調整が進められ、本格的発掘調査の実施と発見場所の保護対策等が討議され、博物館からは、元日の地元新聞報道に押されるように行った緊急記者会見に加えて、1月11日の地元説明会に続いて1月13日に化石の概要・今後の発掘計画等について公式発表が行われました。

恐竜発見地の碑

発掘レポート
(4) 2007年1月25日、重機によって化石を含む地層の上を覆っている岩盤の除去作業、2月15日には、足立・村上両氏に発掘ボランティアたちも加わって本格的な第1次発掘調査(2007.1.25〜3.31)が始まりました。血道弓や尾椎の化石に次いで、大型骨が掘り出され、状況から全身骨格が埋没している可能性に沸き立ちました。化石岩盤を切り出し博物館へ搬送、残りの化石は保護処理の上、次の発掘まで化石産出層保護のためコンクリートで固められました。
 地元の丹波市役所は、担当窓口として「恐竜を活かしたまちづくり課」を設け、「丹波竜」を商標登録、2007年5月1日には「恐竜化石保護条例」を施行して乱盗掘を規制しました。また、現場から少し離れた街中の山南住民センター内に「丹波竜化石工房」を開設して、博物館の指導のもとに丹波竜のクリーニング作業の公開や、丹波竜の化石やレプリカ・関係資料などを展示しています。

恐竜化石発掘層

恐竜化石発掘層が見れる旧上久下村営水力発電所(整備前2008年10月)
(5) 丹波市は、古今、田舎の代名詞“丹波篠山”の地に隣接した過疎と高齢化が進む地域でしたが、一躍この恐竜ブームが活力を吹き込みました。ここでは、開発された恐竜ブランドのお土産物や食堂メニューが人気を博し、発見場所・周辺地域の整備が進んでいます。
 化石発見以後、次々と開催される発掘調査の報告会や展示会、博物館内での常設展示室「丹波の恐竜化石」の開設に加えて、ひとはく恐竜ラボや丹波竜化石工房での化石クリーニング作業の見学ができ、川代渓谷の発見現場近くにある「旧上久下村営水力発電所」(これはまさに産業遺産・近代化遺産です)の敷地内からは発掘現場が間近に見えて解説(自動機)も聞くことが出来ます。(2008年10月)
次々と発掘される恐竜時代の化石(篠山市・丹波市)
2.その後の発見・調査研究成果
(1)地元小学生が獣脚類の歯の化石を発見

 最近では、恐竜発見現場から少し離れた篠山川の河川敷(丹波市ではなく篠山市大山下の河川敷。同じく篠山層群)で地元の小学生が現地授業の際に発見した化石が、博物館により獣脚類の歯の化石(大きさ6mm程度。同じく1.4億〜1.2億年前のもの)と鑑定されました。(2008年10月)
(2)あの恐竜の代表格ティラノサウルス類の前顎歯発見
 兵庫県立人と自然の博物館は、第3次調査で発掘された中生代前期白亜紀の地層「篠山層群下部層」の化石のクリーニング作業中に、ティラノサウルス類の前顎歯を見つけたと発表しました。この年代のティラノサウルス類の前顎歯としては、世界的にも最大級となる可能性があります。

兵庫県立人と自然の博物館 、丹波竜棟
 第3次発掘調査では、竜脚類の歯、肋骨、骨片多数、獣脚類の歯、鳥脚類の歯、その他小動物の骨片の化石が確認されています。
 今まで、見つかっていたのは、首や尾が長い竜脚類の草食系のティタノサウルス類の一種「丹波竜」のほか、アロサウルスの仲間・カルノサウルス類などで、この度超有名な肉食系の恐竜を含む豊な生態系の存在を窺わせています。 (2009年6月) 
(3)今度は、草食恐竜の有名なトリケラトプスにつながる基盤的ネオケラトプス類(角竜類)の化石
 博物館は、篠山市宮田(私有地内の崖)の地層「篠山層群下部層」(約1.4〜1.2億年前の中生代前期白亜紀)から、草食恐竜の角竜類(有名なトリケラトプスにつながる基盤的ネオケラトプス類)の化石(前顎骨、上顎骨および歯骨破片)を足立氏及び博物館研究員が発見したと発表。この化石は、丹波竜や国内最古とみられる哺乳類の化石発見者足立氏(丹波市)が2007年10月に発見して同館で調査の結果、確認されたもので、日本国内において角竜類と確実に同定できる化石の発見は初めて。(2009年11月)

丹波竜化石工房
(4)今度は、草食恐竜の有名なトリケラトプスにつながる基盤的ネオケラトプス類(角竜類)の化石
 博物館は、篠山市宮田(私有地内の崖)の地層「篠山層群下部層」(約1.4〜1.2億年前の中生代前期白亜紀)から、草食恐竜の角竜類(有名なトリケラトプスにつながる基盤的ネオケラトプス類)の化石(前顎骨、上顎骨および歯骨破片)を足立氏及び博物館研究員が発見したと発表。この化石は、丹波竜や国内最古とみられる哺乳類の化石発見者足立氏(丹波市)が2007年10月に発見して同館で調査の結果、確認されたもので、日本国内において角竜類と確実に同定できる化石の発見は初めて。(2009年11月)
(5)またも小学生、カエルの全身化石を発見
 12月1日、博物館は、丹波市山南町上滝篠山川河床の「篠山層群下部層」(約1.4〜1.2億年前の中生代前期白亜紀)から、カエル2匹分の化石が見つかったと発表。うち1匹は小学校の発掘体験授業で三田市立けやき台小5年の住吉さんが見つけたもの。第3次発掘調査で子供たちを対象にした発掘体験やクリーニング推進員による石割調査によって、小動物化石の中に、無尾類の脛腓骨の化石が複数含まれていることを発見。白亜紀前期としては国内3例目、まとまった骨で見つかったのは初めて、新種の可能性もある。全身骨格が密集していたのは、世界的に見ても貴重な標本です。(2009年12月)
(6)第4次発掘調査の成果
 博物館は、第4次発掘調査の成果として、「胴椎(どうつい)」(脊椎の一つ)とみられる化石のほか、竜脚類や獣脚類など恐竜の歯や、カエル、卵の殻など化石2,700点を確認した。
(2010年3月)
(7)国内最古「鎧竜」歯の化石を小学生が発見
 篠山層群下部層(約1億1,000万年前)で、背中が骨で覆われた草食恐竜「鎧竜類(アンキロサウルス類)」の歯の化石が見つかった。鎧竜類の化石は国内4例目で、足跡を除くと最古。
 化石は長さ5.7mmで幅3.7mm、厚さ2mm。2010年10月に、篠山市の体験発掘会で、同市の小学3年生の男子が見つけたもの。(2011年1月)

兵庫県立人と自然の博物館
(8)獣脚類恐竜(テリジノサウルス類)の化石、発見
 兵庫県立人と自然の博物館は、丹波市山南町上滝の篠山層群下部層(約1億1,000万年前、中生代白亜紀前期の地層)から、獣脚類の恐竜(テリジノサウルス類)の下あご歯の化石(長さ3.5mm、高さ7mm、幅1.8mm)を発見した、と発表。篠山層群では、少なくとも7種類目の恐竜化石の発見、と発表した。(2011年3月)
(9)二足歩行の羽毛恐竜(デイノニコサウルス類)の化石、発見
 兵庫県立人と自然の博物館の発表によると、2010年の9月に市民でつくる地学研究グループの2人が岩塊から発見した小型恐竜の左前脚と左後ろ脚の化石は、国内2例目(福井県2007年に次いで)で、鳥に進化する前段階の前脚の機能を解明するうえで非常に貴重な資料とのこと。これで、篠山層群から出た恐竜は8種類の多きを数える。(2011年7月)
(10)県立丹波並木道中央公園も化石密集地? 鳥類に近い恐竜(デイノニコサウルス類)も
 丹波竜の発見地から東へ6q離れた県立丹波並木道中央公園(篠山市西古佐)で、鳥類に近い肉食恐竜(デイノニコサウルス類)で小型のトラオドン科の可能性がある後脚の一部と、トリケラトプスなどの角竜類の原始的な仲間で、基盤的ネオケラトプス類の大腿骨や顎、肋骨、胴椎の化石が発見されました。
 公園造成時の残土から出土したもので、新たな化石密集地帯の可能性が高い。(2011年10月)
(11)丹波竜の下顎部歯骨の化石、国内初、世界に例のない発見
 2006年の丹波竜(ティタノサウルス類)化石の発見に続く第1次発掘調査の際に採取し、人と自然の博物館「ひとはく恐竜ラボ」でクリーニング作業を進めていたところ、丹波竜の下顎部歯骨の化石を発見しました。進化した種類であることをうかがわせ、丹波竜や竜脚類の進化を研究する上で価値が高いとの評価。展示されていた発掘現場からの岩塊の中からの発見で、これからも残った岩塊、化石からの発見が期待されます。
(2012年6月)

3.発掘の一時中断と、その後の発見・調査研究成果
  2007年1月から始まった発掘調査は、2012年1月の第6次まで、国内最高例ともいえる数々の貴重な発見があって、 一躍国内のホットスポットになりました。しかし、発掘調査の地点で範囲拡大の難しさや、発見位置や地点の分散化などあって、2012年度は調査を見送り。 クリーニングの継続など状況を整理していました。

(1)発掘調査の一時中断(2013年3月)
 発掘調査地点の川では、これ以上の調査を進めるためには護岸の掘削も必要になり、費用が膨大になること、 また、既に採掘した化石を含む岩石のクリーニング作業が4分の1程度しか済んでいないので、今後3年程度はこのクリニング作業を進めて発掘成果を出すことに専念する、 として兵庫県立人と自然の博物館は現地での発掘調査を一時中断することとしました。
(2)恐竜化石保護条例(丹波市)の緩和(2013年3月)
 丹波市は、恐竜化石発見地の化石採取禁止区域を決めて、盗掘防止を図ってきたが、恐竜への関心喚起と、市民による発見などの協力を期待して、保護区域の範囲を現在の発掘現場周辺(現場と上下流20m以内)に縮小限定しました。
(3)発掘化石「真獣類」の新種に初学名(2013年3月)
 2007〜2008年の発掘調査で発見された下顎の化石が、このほど、新種の「真獣類(現在の哺乳類の9割以上)」として、「ササヤマミロス・カワイイ」の学名が付された。学名は、「篠山」と「臼(のギリシャ語)」と「(篠山出身の世界的霊長類学者)河合雅雄さん」にちなんで命名された。

(丹波市が発行したパンフレット・2011年)

たんば恐竜・哺乳類化石等を生かしたまちづくり推進協議会が発行した恐竜化石マップ・2012年
(4)丹波竜の竜脚類化石が新属新種と判明、学名を「タンバティタニス・アミキティアエ」(2014年8月)
 兵庫県立人と自然の博物館の三枝春生主任研究員たちの論文が国際学術誌に掲載されました。丹波竜はやはり新種の恐竜であることが確認されました。 これまで発掘された竜脚類化石の尾堆(尾の骨)や脳函(頭の骨)などを分析し、血道弓が他の竜脚類より長く、尾堆上部の棘突起が大きく湾曲し、脳函のV字型切れ込みなどの固有の特徴があり、新種と特定されました。今後、更なる化石のクリーニング作業や脳函などのCTスキャン調査が行われる見込みです。
          ※タンバティタニス・アミキティアエ=丹波(タンバ)+女の巨人(ティタニス)+友情(アミキティアエ)
(5)違った地層から新たな丹波竜の化石発見(2014年9月)
 竜脚類の肋骨とみられる化石が、以前の地層より少なくとも数万年後の前期白亜紀(約1億1千万年前)地層から発見されました。2014年の4月5日に、小学生たちの「週刊まなびー」の取材活動を指導していた丹波竜第一発見者の村上氏によって発掘、県立人と自然の博物館で新たな発見であると発表(同年8月29日)しました。続いて行われた試掘で採取された化石を今後調べて、本格採掘が必要かどうか検討されます。

(6)新種のトカゲ化石を発見(2015年2月)
 当初、2007年11月に白亜紀前期の篠山層群下部層(約1億1千万年前)から発掘されていた化石、右下顎の骨(長さ約2.2cm)が新種のトカゲ(全長約70cm)の骨と、県立人と自然の博物館が突き止めた。そして、化石産出地発見者の足立さんにちなんで、「パキゲニス・アダチイ」と名付けられました。当時陸続きであった中国大陸山東省で1999年に発見されたものと同属で、歯の形や大きさが異なるため新種と判断されました。
(7) 世界的にも貴重、国内初新種の恐竜卵化石発見(2015年6月)
 篠山層群下部層(約1億1千万年前の白亜紀前期)から恐竜の卵の化石5種類を発見、うち1種類が新属新種と判明した、と兵庫県立人と自然の博物館が発表。ほか3種の国内初の発見です。
 新属新種の卵は「ニッポノウーリサス・ラモーサス」と名付けられました。現在、2007年〜2012年に6次の発掘調査で採取保管していた石を再点検し、約90点の卵殻のかけらを抽出、発見しました。正確な色や形、大きさはわかりませんが、大体ニワトリの卵の一回り大きく細長い卵のようで、ラプトルのようで体重15〜20kgの小型で二足歩行する肉食恐竜(獣脚類)のものではないかとみられています。
 また、3月には上滝地区に丹波竜のモニュメント(実物大)が建てられました。

(8)二足歩行の小型獣脚類恐竜か鳥類の卵の化石群を発見(2016年1月)
 兵庫県人と平成13年に丹波竜の化石発掘調査を一時中断した翌年2014年から活動を開始していた地元住民による民間発掘隊、「上久下地域自治協議会」が、博物館などの協力を得て実施してきた丹波竜発見場所近くの泥岩層から卵の化石を発掘。直径約10pの範囲から卵化石1個、別のA4紙サイズの範囲から卵化石3個、また、卵殻の破片化石約100個を確認したと、博物館が発表。形を保持した卵化石から、大きさは横約2p、重さ推定で12〜15g、ニワトリの卵よち小さい。白亜紀前期での獣脚類恐竜や鳥類の卵化石とみられ、世界的にも6例と珍しい。今後、営巣、繁殖行動などの解明が期待されます。

(丹波市が発行したパンフレット・2015年)
(9)丹波竜発見後同年、1年後に発掘されていたカエルの化石、新属新種だった(2016年2月)
 2008年、2009年と丹波竜と同じ篠山層群下部層から発掘されていた化石から発見されたカエル化石2点が、緻密なクリ−ニングの結果、それぞれ新属新種と確認された、と兵庫県人と自然の博物館が発表した。
 学名は、「ヒョウゴバトラクス・ワダイ」と「タンババトラクス・カワズ」と命名されました。
4.丹波はジュラシック・パークだ! その後の発見・調査研究成果
 丹波竜(竜脚類ティタノサウルス形類)の化石が2006年に発見されて以来、篠山層群では、獣脚類ティラノサウルス類(肉食恐竜)など6グループ、ほか哺乳類、トカゲ、小動物の化石が次々と見つかっています。しかも、この様な多種の化石が見つかるのは、福井県・岐阜県の手取層群と熊本県の御船層群ぐらいで、篠山層群は特に化石が密集していることが特徴です。
 2011年1月には、またも地元小学生が体験発掘会で、鎧竜類恐竜(アンキロサウルス類)の歯の化石を、また同じく地元の方が獣脚類恐竜(テリジノサウルス類)の歯を見つけたり、2011年10月にも、別の県立公園内でも化石密集地帯を窺わせる発見の発表も相次ぎ、恐竜の主なグループが丹波にいたことを窺わせます。
 正に、篠山層群を抱える丹波地域は「ジュラシック・パーク」なのです。  これまでの一連の発見で、丹波市と篠山市にまたがる篠山層群を抱えるこの地は、恐竜たちの営巣地で、これからどんな凄い大発見がでてきても不思議はありません。まさに「ジュラシック・パーク」ではありませんか。
 地元は、「今後とも丹波竜をまちづくりに生かし、恐竜化石の重要性再認識をアッピールして、調査が再開されることを期待する」としています。残りの採取岩石のクリーニング作業で、重要な化石が発見されれば、また一層の発掘調査が再開されることはまちがいありません。
 恐竜ブームのお陰で、地域・郷土のことを探求するムードが高まっていることの顕れでもあり、誰もが恐竜と聞いただけでワクワクしてくるものがあります。将来は、博物館に丹波竜棟が、現地には丹波竜館が整備されて、恐竜ファン・研究者だけでなく、多くの人たちが知的探求心をくすぐる郷土史探訪への足を踏み出されて、大いに賑わうことになるのでしょう。期待して待ちましょう。


※右のパンフレット:「たんば恐竜化石マップ」(平成27年3月)
             たんば恐竜・哺乳類化石等を活かしたまちづくり推進協議会 発行

実物大に再現された丹波竜「タンバティタニス・アミキティアエ」(丹波竜の里公園)
(1) 丹波竜は日本の史上最大級の陸上生物でスローライフ型(2017年1月)
 最近の研究から、丹波竜の生態が明らかになってきました。首だけで5m以上、全長で10数mという巨大恐竜だった「丹波竜」は、日本の史上最大級の陸上生物であり、ユニークな生態でした。長い首桁外れに巨大なお腹を持った独特の体型で、植物食で、巨体ゆえののんびりと余り移動しない超スローライフを送っていたのではないかと考えられています。
 意外と小さい歯で、巨体を維持するエネルギーを得るために、大量の植物の噛まないで丸呑みし、大きなお腹の中には特に発達した胃や腸などの消化器官内に微生物を大量に抱えて、その働きで必要なエネルギーを消化吸収していたと思われます。

 また、巨体ゆえの肉食恐竜から襲われることは少なかったと考えられています。しかし、産卵場所に固まって誕生した赤ちゃん丹波竜は、親竜とはなれ、その多くは肉食恐竜の餌食になったでしょう。でも、赤ちゃん丹波竜の成長は生まれた時は人間並みの3kg程度だったのが、数年で5m程度になり、大人の丹波竜の群れに合流することで無敵の生存能力を手に入れていました。これは丹波竜の脳の特徴に極端に肥大化した脳下垂体から、成長ホルモンが大量に分泌されて、早く巨大化する生存戦略があったと考えられています。
 無敵の巨体でスローライフな丹波竜が、1億1千年前の篠山層群の大地を闊歩していたのですね。
(NHK『ダーウィンが来た』を参照しました)

丹波市発行(平成29年2月)

元気村かみくげ
(2)恐竜化石が縁となって、4市町が連携を目指す。(2017年6月)
  丹波竜ゆかりの丹波市と篠山市は、2017年4月に植物食恐竜の全身骨格を発掘した北海道のむかわ町と、肉食恐竜化石などが多数出土し恐竜博物館も整備している熊本県の御船町と、2017年6月に丹波市で首長会議を開催した。今年秋までに、講演などの人材交流や展示会での化石貸与などの具体的な連携を進める協定を結ぶこととした。
(3)恐竜か鳥類の卵化石発見地層の発掘調査へ(2018年1月)
 2年前に篠山層群大山下層から発見された小型獣脚類恐竜か鳥類のものとみられる卵化石の、種族特定や生態系解明を目指して現地地層の発掘に取りかかる(県教育委員会)。 この約1億1千万年前の地層、白亜紀前期で卵形状で密集だったことから、周辺は恐竜か鳥類の営巣地の可能性があり、未確認卵種の可能性もあり、発掘は大いに期待されます。

(4)篠山層群大山下層から角竜類(草食恐竜)3体の化石が発見(2018年2月)
 3体とも有名なトリケラトプスに繋がる「ネオケラトプス類」の原始的な仲間とみられます。草食で、上顎の先端に嘴状の骨が特徴です。県道77号線のバイパストンネル(篠山市、丹波並木道中央公園の西北地域)の掘削工事現場の岩石から、角竜類の上下顎、歯骨、背骨等16点が発掘されました。その他、鰐や草食恐竜のものとみられる歯、卵殻など多様な化石も掘り出されています。現在、掘削工事から排出された岩石を保管し化石の有無を検証しています。
(5)県立人と自然の博物館が卵化石発見地層の発掘調査を開始(2019年1月)
 博物館 は2019年1月〜2月に、以前(2015年)に複数の小型獣脚類恐竜か初期の鳥類とみられる卵化石が密集して発掘された篠山川河川敷の近くの約1億1千万年前の地層の場所を発掘調査する。国内で初めて、世界でも珍しい発見だったので、今後の調査で営巣行動の解明が期待されている。

(6)洲本で恐竜時代の海鳥化石が発見(2020年6月)
 淡路島に分布する和泉層群(洲本市)で、後期白亜紀末期(7200万年前)の海の地層から、絶滅した海鳥「ヘスペロルニス類」の化石がアジアで初めて発見された、と博物館が発表した。

(7)世界最小の恐竜卵の化石、丹波で発見(2020年6月、8月)
 篠山層群で発掘された約1300点の卵・卵殻化石のうち、4種類をティラノサウルスなどと同じ獣脚類恐竜の卵殻と確認し、うち1種類を新卵属・新卵種」の恐竜卵化石で、約1億1千万年前(白亜紀前期)の地層から見つかった世界最小となる恐竜卵化石で、 「ヒメウーリサス(かわいい卵化石)・ムラカミイ」と丹波竜化石発見の貢献者村上さんにちなんで命名し、また、新卵種の化石も「サブティリオリサス・ヒョウゴエンシス」と命名した、と博物館と筑波大学が発表した。 篠山層群からは計6種類の恐竜卵殻化石が確認されたことになり、前期白亜紀の地層では、世界で最も卵殻化石の種類が豊富な地域となりました。
 この卵化石は、ギネスワールドレコーズからの申請打診に応じ、5月23日付けで認定されました。
(2020年6月、8月)

(8)篠山層群より新種のトカゲの化石を発見(2021年11月)
 篠山層群の丹波竜化石の見つかった場所から数mの地層から新種のトカゲの化石が見つかり、「モロはサイウル・カミタキエンシス」と名付けられました。今回発見されあのは、左下顎の一部、長さ2cm,約3mの歯が2本残っていた。骨や歯の形状からドクトカゲ類の仲間で、隊長30〜40cmと考えられている。これまで最古の北米のものより古く、世界最古、国内初の発見です。
(9)鳥に進化をたどったグループに属する新種と判明した恐竜化石(2024年7月)
 篠山像群大山下層の地層の県立丹波並木道公園(丹波篠山市)で見つかった化石が新属新種の恐竜と判明した。痔もt住民の「篠山層群をしらべる会」メンバーの松原さんを大江さんが2010年と2011年に見つけた前脚、後ろ脚のひざとかかとの化石。恐竜は「ヒプノヴェアトル・マツバラエトオオエオルム」と命名されました。現代の鳥に近いトロオドン科から進化した「トロオドン亜科」で初期の種、推定で全長1.1m、体重2.5kg、全長が羽毛で覆われて二足歩行だったと見られている。
(10)またまた新属新種の角竜化石を発見(2024年9月)
  新属新種の恐竜化石として国内13例目、丹波地域では3例目。同じく篠山層群大山下層(丹波篠山市宮田)で県立人自然の博物館が指揮した調査で、恐竜のフリルという襟飾り、ほお、肩の骨の形が他の角竜を異なる新属新種の角竜と判明。「ササヤマグノームス・サエグサイ」と命名。原始的な仲間で、角が無く襟飾りも小さいのが特徴。成長途中で全長80cmと推定され、二足歩行だったとみられる。東アジアを紀元とする角竜類は、ユーラシア大陸東部から当時繋がっていた北米大陸西部へ陸伝いに渡ったと考えられている。
丹波竜ゆかりの施設

●兵庫県立人と自然の博物館
 丹波市で発掘された恐竜化石、カエル等小動物化石などを展示した「丹波の恐竜化石」ブース(3階)。また、発掘した化石のクリーニング作業が見学できる「ひとはく恐竜ラボ」(4階、屋外別棟。2008年4月オープン)が設けられている。
(所在地:三田市弥生が丘6丁目)
(開会時間:10〜17時。休館日:月曜日、ただち祝日の場合は翌日、年末年始、臨時もある。入場有料。)
※左写真:
  兵庫県立人と自然の博物館に併設されている「ひとはく恐竜ラボ(クリーニング作業場)

県立人と自然の博物館本館

丹波竜の発見化石部位

発掘された恐竜骨復元

丹波竜発掘現場レプリカ

丹波市旧上久下村営上滝発電所記念館

●丹波市旧上久下村営上滝発電所記念館/恐竜化石発見地
 恐竜発見地の岸に残されていた村営発電所の跡を「丹波市旧上久下村営上滝発電所記念館」として地元の貴重な産業遺産・近代化遺産を公開するとともに、恐竜発見の地層なども間近に見れる恐竜館として、来訪者へのPRを開始しています。(2010年2月オープン)
(所在地:丹波市山南町上滝八ヶ坪1312-2)
(1階展示:旧上久下村営上滝発電所ものがたり、発電所写真パネル、マイクロ水力発電所装置。 2階展示:恐竜が歩いた大地、丹波市くげたに観光マップ、恐竜化石発掘ニュース、四季の映像ギャラリー。 休館日:月曜日・火曜日は休日、祝祭日の場合は翌平日、年末年始、その他イベント等により変更あり)


丹波竜発掘地

丹波竜化石第一発見状況再現

丹波竜発見地展望公園

同左、発掘現場再現

元気村かみくげ
●元気村かみくげ/丹波竜の里公園
 発見地に隣接して、採取石片から化石を見つけ出す作業、化石発掘体験に参加(有料300円。土・日・祝日のみ。午前10時〜午後4時、12月〜2月は午後3時まで)できる「元気村かみくげ」も2010燃4月にできました。
 また、元気村かみくげに隣接して、2015年3月に、「丹波竜の里公園」が完成。ここでは、丹波竜タンバティタニス・アミキティアエの実物大(全長15m)や、ティラノサウルス恐竜の滑り台や恐竜が同席するベンチなど、ファミリー向け、及び撮影スポットです。

丹波竜の里公園の実物大

恐竜ゆかりの遊具類

かみくげ内の丹波竜頭部模型

丹波竜の看板(地域最初)

丹波竜化石工房「ちーたんの館」
●丹波竜化石工房「ちーたんの館」
 丹波市で化石が見つかった大型草食恐竜「丹波竜」への理解を深めてもらうため、丹波市は展示施設「丹波竜化石工房」の展示を刷新、新装オープンした。(2011年1月新装)
(所在地:丹波市山南町谷川1110)
(展示面積:約670u、従来の4.7倍。 展示:壁面に丹波竜の骨格図、全長13m、高さ3.5mが飾られ、クリーニング作業を終えた部分から骨格模型を貼り付ける。丹波竜化石が発見された当時の現場再現模型。本物の化石約30点など。 入場有料。月曜および年末年始休館。午前10時〜午後5時、11月〜3月は午後4時まで)

丹波竜復元進行中

丹波竜全身骨格

ガストニア全身骨格

ティラノサウルス頭部骨格

丹波竜発掘現場ジオラマ

化石クリーニングルーム

県立丹波並木道中央公園の本館
●兵庫県立丹波並木道中央公園
 公園建設残土の中から、鳥類に近い肉食恐竜デイノニコサウルス類の前足化石の発見(2010年)に続き、残土下を掘り下げ、2011年に同類恐竜の後ろ脚の一部化石と、トリケラトプスなどの角竜類の原始的仲間の基盤的ネオケラトプス類の化石が発見された。ここも、中生代前期白亜紀の篠山層群下部層(約1億1千万年前)にあります。
 この公園は、「丹波の森構想」に基づく広域レクリエーション、都市と農村の交流及び地域活性化の拠点で、遊戯施設や芝生公園、棚田、茅葺民家、森林活動センターなどで家族連れで楽しめます。
(所在地:篠山市西古佐)
兵庫県立人と自然の博物館(ひとはく)
〒669-1546 兵庫県三田市弥生が丘6丁目
TEL 0789-559-2001   http://hitohaku.jp/
丹波竜化石工房
兵庫県丹波市山南町谷川1110 山南住民センター内
http://www.tambaryu.com/
(参考)日本国内での恐竜化石の発見状況
 日本国内での恐竜化石の発見は、1978年岩手県岩泉町茂師での竜脚類(通称、モシリュウ)が最初です。その後、福井県勝山市でのイグアノドン類のフクイサウルス・テトリエンシスなどの発見で一躍日本に恐竜ブームが巻き起こりました。兵庫県内では、洲本市でランベオサウルス類の恐竜化石が最初ですが、当時あまり話題にはなりませんでした。
 全国で主な恐竜化石の発掘場所は、北海道、岩手県、福島県、群馬県、長野県、富山県、岐阜県、石川県、福井県、三重県、兵庫県、和歌山県、徳島県、山口県、福岡県、熊本県にあります。この中で、大々的に展示を行っている福井県立恐竜博物館、国立科学博物館(東京)、そして兵庫県立人と自然の博物館を是非とも見ておかれるべきと思います。
福井県立恐竜博物館
http://www.dinosaur.pref.fukui.jp/
国立科学博物館
http://www.kahaku.go.jp/
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