小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)
と神戸
(郷土史の談話45)
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と神戸
小泉八雲は、本名をパトリック・ラフカディオ・ハーン(Patrik Lafcadio Hearn)といい、父がイギリス軍医として滞在中に結婚した近隣島の富豪の娘との間に1850年誕生。父の駐在地の島の名前レフカダ島(Lefkada)からミドルネームの「ラフカディオ」が命名されたそうです。
1852年にアイルランドのダブリンに戻り、イギリスとフランスで学ぶ。幼少の頃に、寄宿学校で回転ブランコ事故で怪我して左目を失明する。これが原因か、右目は強度の近眼であった。
1859年に渡米し、ジャーナリストとして、報道のみならず、文芸評論など著述活動においても名を馳せるようになった。1890年、40歳の時にアメリカの出版社の日本通信員として来日するが、その6年前のニューオーリンズ万博で会った服部一三氏の斡旋で、島根県松江市の尋常中学校や尋常師範学校の英語教師を勤める。そこで、1891年1月に松江の士族の娘、小泉セツと結婚し、11月には熊本市の五高(第五高等学校)の英語教師となって赴任、長男も誕生して、契約切れとなる1894年まで滞在。
この年から、ラフカディオ・ハーンは神戸にやって来ます。神戸で、ハーンはどんな活動をしていたのでしょうか。
(左写真:小泉八雲=ラフカディオ・ハーンの肖像)
(1)1894年(明治27年)44歳
熊本での契約切れを迎え、熊本五校の英語教師を辞めて、元の記者生活に戻るべく、神戸クロニクル社のロバート・ヤング社主に、就職承諾の手紙を送り、招聘される(9/1)。 10月.上旬に門司から海路神戸へ、神戸着(10/10)。10月20日頃、神戸市の下山手通4丁目7に居住。家は、1階は和風で2階は洋風という変わった建物だったそうです。
下山手通4丁目7の
居所跡附近
旧居留地の神戸クロニクル社(ハーン退職後に移転)
生真面目な性格から執筆活動に精を出すが、12月14日、右目だけでの酷使が災いか、過労で目に発症し倒れる。暗い部屋で目に湿布をあてて安静にし、執筆活動も休むことを余儀なくされる。
(2)1895年(明治28年)45歳
1月になって、眼は快方へ。しかし、居留外国人たちとの交流を避けていたきらいがある。遂に30日に神戸クロニクル社を退社し、今で言うフリーの執筆活動に入る。『東の国から』をホートン・ミフリン社より出版(3/9)。この頃、宗教観やスペンサー哲学の評価で、日本研究家のチェンバレンと意見が対立した。どうも、激情的なところのあるハーンは孤独して、周囲との猜疑心が強まる一方になった様子。これ以後、ハーンは自身の内面を凝視し、ますます著作に打ち込むようになった。
民間信仰に深い関心を寄せていたハーンは、各地の霊場などを訪ねることが多かったが、この時も気晴らしと日本研究に、家族で京都へ旅行(4/15)。その後、下山手通6丁目26へ移転。また日本帰化を望み、日本国籍取得を決意したのもこの頃か。大谷正信が来訪して、兵庫の大仏と観音像を共に見物(7/8)、遷都1100年祭の京都を見物(10/24)、日本研究にますます力が入る。12月に帝国大学文科大学長の外山正一から、英文講師の招聘打診が来て、受諾。年の暮れを迎えて、また、中山手通7丁目番外16へ移転。
(左写真:下山手通6丁目26の旧居跡(兵庫県立中央労働センター)のレリーフ)
(3)1896年(明治29年)46歳
帰化手続が完了し、「小泉八雲」と改名する(2/10)。「八雲」は「はうん(ハーン)」とも読めるのですが、「八雲」は、古事記の日本最古の和歌「八雲立つ 出雲・・・」から命名したそうです。それに、ハーン自身、日本神話でいう出雲系(クシナダ姫)とヤマト系(スサノオ命)の結婚は、日本女性(セツ)と外国人(ハーン)と婚姻したイメージだったそうです。
3月に家族で伊勢へ旅行。『心』をホートン・ミフリン社から出版(3/14)。また、旅行を計画するが、琉球方面を断念して、4月、京都・奈良方面に旅する。6月にも家族とともに、松江美保関、出雲大社を再訪し、8月23日に神戸に戻る。
中山手通7丁目番外16の居所跡付近
総じて、八雲は弱い目を庇いつつ、情緒不安定ながら論説記者として健筆をふるったのです。9月2日には、帝国大学文科大学講師の辞令が発令され、セツと2人で上京(9/7)。2年滞在した神戸を離れて行きました。
その後、1903年に東京帝国大学を退職し、後任の夏目漱石に引き継ぐ。翌年に早稲田大学の講師を務めるが、狭心症にて9月26日、満54歳で亡くなりました。
「耳なし芳一」「ろくろ首」「雪女」などを収録した『怪談(Kwaidan)』など、多くの民話や日本文化を背景にした著作が残されています。日本人自らが自分たちの文化を見直す端緒ともなりました。(2013年6月)
(左写真:小泉八雲資料室(兵庫県立中央労働センター内))
※参考資料:文学アルバム『小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)』小泉時・小泉凡共著、2000.4.30恒文社
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