「鉄人28号」と「三国志」で活性化する震災復興の街・長田
 (地域の活性化、まちづくり・まちおこしへの取組み 9)
「鉄人28号」と「三国志」で活性化する震災復興の街・長田 
●天を衝く実物大の「鉄人28号」
 神戸出身の漫画家、横山光輝さんの代表作「鉄人28号」の原寸大のモニュメントが神戸市長田区のJR新長田駅近くの若松公園に完成し、2009年10月4日完成式典が開催されました。
 漫画に登場するスケールそのまま、高さ15.3m(身長18m、体重50t)、顔の長さ2.2m、手の大きさ1.7m、ウエスト20m、足のサイズ4mと、正に天を衝くサイズ。
(写真左:地下鉄「新長田駅」の壁面の原寸大鉄人図)
 鉄人28号の立つ新長田地区は、阪神淡路大震災で激甚の被害を受け、懸命の復興に努めてきたところです。
 地域の再開発が進む中、震災前のレベルへ、またそれを超えての賑わいを求めて、地域の人たち、特に新長田の商店街関係者たちが2005年秋頃、地元の漫画家横山光輝さんの「鉄人28号」「三国志」に注目して、2006年に「KOBE鉄人PROJECT」をスタートさせ、鉄人モニュメントの制作と、将来の「横山光輝記念館」の建設に取り掛かりました。                          (写真右:駅から鉄人へ、新長田1番街)

 鉄人モニュメントの建設総工費は、総額約1億3,500万円。神戸市の補助金4,500万円に加えて、主に商店主や企業、市民たちの協賛金約9,000万円の浄財が集まってきた。  モニュメントの原型はデザインコンペにより模型・造形作家の速水さん(大阪市)の作品を採択。金属加工の特殊技術を保有する北海製作所(大阪府岸和田市)に制作を発注した。
 (写真左:新長田1番街の照明塔の鉄人型照明)
 2009年10月4日、ぬけるような青空の下、完成式典を向かえた若松公園には、約1,000人の関係者や地域住民たちが参集するなか、琉球の踊り、黒服・黒眼鏡の合唱隊がムードを盛り上げてテープカット。
 当日は日曜日で、子供連れ家族も多かったが、それよりも目を輝かせて見上げる団塊の世代以上の方々が特に多く目に付いた。東京お台場のガンダム像とは違った雰囲気であった。             (写真右:テープカットを祝う黒服・黒眼鏡の合唱隊)
 既に、全国の旅行業界からの問合せが多く、神戸ルミナリエと組み合わせた鉄人28号・三国志めぐりのツアー企画が人気とか。
 また、この鉄人28号モニュメントに神戸市は特別市民票を交付することとし、11月29日に漫画の主人公の正太郎(しょうたろう)と同じ読み名の長田区在住の児童4人に長田区長さんから手渡されました。
 そして12月6日には、大正筋商店街と六間道商店街の交わる場所(アスタくにづか6番館1階)に、「KOBE鉄人三国志ギャラリー」がオープンしました。
 阪神淡路大震災で甚大な被害を被った長田において、復興・賑わいづくりの拠点の形成、ツーリズム資源の完成は何をおいても大歓迎である。震災の街に、復興への雄叫びが響き渡る。

鉄人28号モニュメント完成記念セレモニー

鉄人広場から南へ続く新長田1番街

国道2号から見る新長田1番街

阪神淡路大震災の復興ミュージアム(大正筋商店街)

(2009年12月〜、2016年10月)

●「三国志」で長田地域の活性化へ
大正筋商店街南詰の「KOBE鉄人三国志ギャラリー」
 2世紀から3世紀にかけて、中国は後漢末期の政情不安、黄巾の乱を経て、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の三国が争覇する時代を迎えました。この時代の魏(ぎ)の曹操孟徳・呉(ご)の孫権仲謀・蜀(しょく)の劉備玄徳らが争い合ったことが話の中心となっています。

地下鉄「駒ヶ林駅」の三国志の壁画
『三国志』と『三国志演義』
 この三国の時代のことを叙述した歴史書が、次世代の西晋に仕えた陳寿(233年 - 297年。元、蜀の家臣)によって『三国志』と名づけられた事に由来します。その後、唐・宋・元の時代にわたってこの歴史書『三国志』に基づいて、魏(ぎ)・呉(ご)・蜀(しょく)の前後の時代も含めて、民間伝承などを加えて三国争覇の時代小説として巷間を賑わし、その説話を基にして、明代初期に羅貫中たちが取りまとめ、それが『三国志演義』として成立したのです。
  『三国志演義』は、戦略の成功・失敗例が明解に描かれていて、しかも簡単に読むことができ、まさに、読者自身が三国時代の主人公たちに思いを寄せ、なりすまし気分を味わえることから、世間に広まりました。今で言う、ロングベストセラーです。最近では、中国国内でも経済発展にあわせ、昔から馴染んでいる三国志に関わる寺院等での英雄たちの巨大な石像建立や記念施設が整備され、テーマパークなど観光ビジネスの展開が各地で見られるようになっています。
横山光輝さんの長編漫画『三国志』
 日本では吉川英治の「三国志」が一番ポピュラーで、事実上の定番本となっています。40年前の1971年から1986年にかけて、神戸市須磨区の出身の人気漫画家、横山光輝さんが吉川三国志をベースに独自の解釈を加えながら長編漫画「三国志」を書き上げ(単行本60巻、全12,059ページ)、大人気となりました。また、この『三国志演義』を手本にしたビジネス書が多数刊行され、各種のゲーム・漫画(アニメ化も)が進み、爆発的な三国志ブームが起きています。
 今では、日本のみならず、諸外国においても読まれ、特に本場の中国においても、若者達の漫画ブームと活字離れもあってか、、文章の『三国志演義』よりもこの横山光輝さんの漫画『三国志』漫画が 読まれて、あらゆる世代の入門書として、日本のみならずお膝元の中国国内においても大人気とか。います。
横山光輝さんの地元、新長田地域の取り組み
 阪神淡路大震災で甚大な被害を被った長田においては、復興と街の賑わいづくりを目指して、地元出身の横山光輝さんの人気漫画を活用する。 2006年7月神戸ながたTMOが鉄人事業特別部会を発足、同9月にKOBE鉄人PROJECT実行委員会を発足させ、同11月に特別展「横山光輝・三国志の世界」を開催。 その翌年も新長田エリアにて「三国志祭り」を開催。「特定非営利活動法人KOBE鉄人PROJECT」を県が認証、正式NPOとなる。2008年に「第2回三国志祭」開催、 続いて、六間道商店街に曹操像移転・「魏武帝廟」を完成させた。
 2009年には三国志検定の神戸会場を引き受けたり、この間、三国志に登場する英雄たちの石像を地域内随所に設置し、 8〜9月には鉄人モニュメントの完成に併せて「第3回三国志祭」を開催(来場者数約12,000人)。同12月には、KOBE鉄人三国志ギャラリーを開設、2010年秋に年々充実する催しになった「第4回三国志祭」、11月に「第1回横山光輝「三国志」検定(3級・2級)」が神戸・東京で開催されました。
新長田駅南の大正筋・六間道・本町筋・西神戸センター街・丸五市場周辺には三国志の英傑たちの像が建ち並ぶ

魏武帝廟「曹操」展示(六間道商店街)


魏武帝廟の曹操像は、2008年の北京オリンピック記念で、ハーバーランドに展示されていたのを移設(六間道商店街)

魏、呉、蜀の三旗

三国志関係の拓本資料を展示している三国志館(六間道商店街)

KOBE三国志ガーデン

KOBE三国志ガーデンは2016年5月に閉館
 神戸市長田区のJR新長田駅から徒歩で約10分、南に大正筋商店街を行った新長田再開発ビル「アスタくにづか5番館」に、2011年3月19日、「KOBE三国志ガーデン」がオープンしました。KOBE三国志ガーデンには、「三国志ジオラマ館」「三国志交流館」「三国志体験館」「三国志庭園」がありました。
 しかし、2016年5月に閉館し、映画「レッドクリフ」でも再現されていた関羽愛用の49Kgもある「青流えん月刀」を持ち上げて重さを体感するコーナーや展示物は近隣の「KOBE鉄人三国志ギャラリー」などに移転。
 また、幅13メートル奥行き2・6メートルの最大級の「三国志ジオラマ」は、地下鉄駒ヶ林駅前の量販店「アグロ・ガーデン」2階にて観覧できます。「桃園の誓い」や「赤壁の戦い」など三国志の名場面約120シーンを再現、1500体のフィギア並ぶ光景は圧巻です。
  「アグロ・ガーデン神戸駒ヶ林店」で公開されていた「三国志ジオラマ」は、2019年に同区内の神戸常盤大学にて移転公開されています。(2019年11月)

三国志等身大石像
「関羽(かんう)」
(アスタくにづか4番館前)

三国志等身大石像「孫権(そんけん)」(KOBE鉄人三国志ギャラリー前)

三国志等身大石像「周瑜(しゅうゆ)」(六間道・市営地下鉄駒ヶ林駅入口前)

三国志等身大石像「諸葛孔明(しょかつこうめい)」本町筋ビッグハート広場)

三国志等身大石像
「劉備(りゅうび)」
(丸五市場内・昭烈帝廟)

ブロンズ像の
「司馬懿(しばい)」
(西神戸センター街角)

ミニブロンズ像の「関羽(かんう)」(三国志ガーデンのメインゲート)

三国志キャラクターのミニブロンズ像「孔明わん」

ビル壁面に描かれた諸葛孔明ブロンズ像の「司馬懿(しばい)」(二葉町4丁目)

張飛(ちょうひ)と馬超(ばちょう)の葭萌関の戦い

三国志ブロンズ像
「呂布(りょふ)」
(アグロ・ガーデンの入口)

アグロ・ガーデン内の「三国志巨大ジオラマ」は、
神戸常盤大学へ移転

三国志巨大ジオラマの説明板

三国志巨大ジオラマの展示ケース

三国志巨大ジオラマ展示

三国志巨大ジオラマ展示

三国志なりきり隊の商店街のみなさん

三国志祭の看板
 地元の新長田周辺、大正筋商店街、六間道商店街などには、地元商店主らによる「三国志なりきり隊」が闊歩して、ムードを盛り上げています。 鉄人28号と併せて「三国志」をテーマに、街おこし・賑わいづくりに取り組みはこの地域に多大な成果をもたらしています。今後の進展が楽しみです。
(2011年4月〜、2016年10月〜、2019年12月))
●「三国志」英雄たちの一番人気は誰か? 
   ※2014.5.1 FMわいわい放送「アフタヌーンねね」より
(1)FMわいわいの地元、長田の下町、大正筋商店街や六間道商店街など周辺一帯を中心として、地元須磨出身の漫画家、横山光輝さんの人気コミック「三国志」をテーマにしたまちおこしが展開されています。
 「KOBE三国志ガーデン」がオープン。特に「三国志ジオラマ館」には、幅13メートル奥行き2・6メートルの最大級の三国志ジオラマが設けられています。ジオラマは、「桃園の誓い」や「赤壁の戦い」など三国志の名場面約120シーンを再現、1500体のフィギア並ぶ光景は圧巻です。ジオラマ横には、映画「レッドクリフ」でも再現されていた関羽愛用の49Kgもある「青流えん月刀」を持ち上げて重さを体感するコーナーもあります。
 また、ジオラマ館・交流館・体験館が並ぶ前に「三国志庭園」あり、交流館では三国志のコスプレをして記念撮影ができます。ガーデンの東方に三国志の土産物店もオープンしています。
 地元の新長田周辺、大正筋商店街、六間道商店街などには、地元商店主らによる「三国志なりきり隊」が闊歩して、ムードを盛り上げています。
街のあちらこちらに、曹操、劉備、孫権の3人に加えて、司馬懿、諸葛亮、関羽、周瑜、呂布、趙雲、張飛と馬超と、三国志に登場する英雄たちの像が立っています。
 三国志の英雄たちの活躍には胸躍るものがあります。今から1800年以上前、日本で言うと邪馬台国の卑弥呼の時代ですが、中国大陸には、魏、蜀、呉の三国が林立して戦っていた時の話です。

(2)魏の国には、曹操が。苛烈にして徹底した現実主義者、優秀な人材登用など、優れた政治家であり、軍学者であり、詩も嗜む文人、武勇の持ち主、とややスーパーマン的。臣下には、司馬懿(司馬仲達)が居ました。
蜀の国には、劉備。高潔にして仁徳溢れる義人。荒くれ者も束ねる親分肌。その軍師には三顧の礼で迎えた諸葛亮(諸葛孔明)で、外交、内政、新兵器開発、軍事兵法に長けていました。また、劉備と義兄弟の契りを結んだ、豪傑で忠義心が高く、神として祀られるまでの換羽、勇猛果敢な張飛、ほか冷静で肝の座っていた趙雲、と人材豊富。
呉の国では、孫権。人心掌握し、聡明にして、仁智、雄略の主と言われていました。臣下には、軍略家として周瑜、軍事面での中心人物です。妻には絶世の美女、小喬が名高い。

(3)世界中で、この物語は人気を博しています。それで、この登場する英雄たちのうち、誰が一番人気なのでしょうか。実は、国によって、かなりの違いが見られます。
 まず、お膝元の中国では、何と言っても関羽が一番です。義理に厚く、勇猛で強く、神として関帝廟に祀られているほどです。
 日本では、智将、軍師好みが強く、知略溢れた諸葛亮が人気を集めています。
 アメリカなど西洋国では、曹操を挙げる人が多いのです。現代のビジネス社会でも通用する理想的経営者、エグゼクティブの要素を満載、具備して、その手腕には憧れさえ持っているようです。

(4)意外に、代表格の蜀の劉備や呉の孫権は人気が無いのです。天下分け目の決戦、赤壁の戦いを描いた最近の映画「レッド・クリフ」でも、劉備の側には諸葛亮や関羽たち、孫権には周瑜というバイ・プレイヤーの方が、魅力ある存在感で目立っています。
 映画のキャスティングされた俳優を見ても、関羽には中国人を、諸葛亮には日本人を、曹操には中国系アメリカ人を当てています。お国柄とは言え、面白いものですね。
(2014年5月放送)
●プロジェクトの主な経過
 発起人会発足(2006.1)、事務局およびホームページ開設(2006.6)、「鉄人28号特別展」開催(来場者数4.444人)(2006.6.17〜7.2)、神戸ながたTMO・鉄人事業特別部会発足(2006.7.18)、KOBE鉄人PROJECT実行委員会発足(2006.9.19)、特別展「横山光輝・三国志の世界」開催(来場者数5386人)(2006.11.3〜19)、モニュメントのデザインコンペ(2007.4)、新長田エリアにて「三国志祭り」開催(2007.7.29)、「特定非営利活動法人KOBE鉄人PROJECT」県認証、「第2回三国志祭」開催(来場者数約3000人)(2008.7.27)、六間道商店街に曹操像移転・「魏武帝廟」完成記念式典(2008.10.26)、モニュメント部品の制作開始(2008.11)、三国志検定開催・神戸会場として協力(2009.7.12)、鉄人モニュメント起工式(2009.7.27)、鉄人モニュメント組立開始(2009.8.11)、「第3回三国志祭」開催(来場者数約12,000人)(2009.8.22〜23)、鉄人モニュメント完成(2009.9.29)、同完成式典(2009.10.4)、KOBE鉄人三国志ギャラリーの開設(2009.12.6)、KOBE三国志ガーデンの開設(2011.3.19)、KOBE三国志ガーデンの閉館(2016.5.14)

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