世界中の子ども博物館がモデルにした“エクスプロラトリアム“(アメリカ)
 
ツーリズム関連のレポート・エッセイ集 11)
世界中の子ども博物館がモデルにした“エクスプロラトリアム“(アメリカ)
(子ども科学館構想調査1999年より)
 エクスプロラトリアムは世界で最先端の科学館として知られている。当時、播磨科学公園都市において「こども科学館(仮称)」構想があり、その計画化のために、1999年10月米国サンフランシスコのエクスプロラトリアムを訪問し、展示部製作コーディネータのティナ・シュミッツ女史の説明・案内を受け、主に展示に関する調査を行なった。
(写真右:播磨科学公園都市における兵庫県の「こども科学館(仮称)」完成予想模型)

(エクスプロラトリアムの正面入口)
 同館は、科学・芸術・知覚のミュージアムで、特徴としては来館者が展示やディスプレイに触れてもよく、いわゆるハンズオン展示、年間60万人が訪れる。展示面積は比較的小さいが、展示物を自ら開発するとともに、製品やアイデア(博物館設立運営ノウハウも)の販売も行なっている。日本の市場も大きく、大阪府などの児童館等へコンサルティングサービスも提供している。同館から道路を隔てたところに事務所兼製作所がある。
 また、展示物以外に来場者を楽しませるものとしては、インターネット放送に対応した科学教室の開催、実際の研究室と変わらない生物系研究室、解剖の実演などがある。さらに、学校教師の研修センターなどの機能も有している。
 当日も、館内展示の一画で、近隣小学生のグループに宇宙物理の易しい講座をインターネットで中継放送していた。(現在でこそ当然有りうる事業であるが、当時は先進中の先進事業で、とても新鮮な思いで見学した。)
 施設は、米軍施設となっている84年前の「太平洋博覧会」のメイン会場施設を」安価でレンタルを受け、連邦政府、州政府、市に加えて豊富な寄付金(企業、個人)の支援のもとに多数の専門スタッフに加え、175人というボランティア(主に学生)の協力体制が制が確立しており、アメリカ社会での大人も含めた子供たちへの科学技術の博覧への力の入れ様がわかる。
(右写真:このベイエリアにある博覧会会場跡の公園内の一画にエクスプロラトリアムがある。映画「ザ・ロック」の撮影現場としても有名)

 特に我々が同館を模範とすべきポイントは、@地域の科学者、教育者、学生たち、周辺地域コミュニティのサポートを得やすい環境にあること(子供たちの科学教育への協力マインドが高い)、Aボランティア活動が活発であること(館内ガイド、展示物製作、その他)、B展示物をほとんど自作していること、等々である。

●エクスプロラトリアムの概要(1999年当時)
 エクスプロラトリアム(http://www.exploratorium.edu))は、サイエンス(科学)、アート(芸術、工芸)、ヒューマン・パーセプション(人間の知覚等)の博物館で、1969年に物理学者・教育者のフランク・オッペンハイマー(初代館長)によって設立されました。館の目指すところは、私たちの周りのものへの探究心を育てる技術革新やそのプログラム、ツールを通して学ぼうとする文化を創り出すことにあります。
(1)来館者
 毎年60万人、うち60%は大人、40%が子供たち。44%が市内ベイエリアから、22%がその他カリフォルニア州から、26%が他の州から、8%が国外から。館の(友の)会会員は8,500人・家族。56%が入場料免除または割引。毎月第1水曜日が無料解放日で37,000人に登る。
(2) 公開事業
 デザイン・基本的加工・組立られた650以上の応用可能な展示・表現装置・アート作品。毎年3分の2は、企画展示。ビジュアル、実演、メディアアート・プログラムや作品のデモンストレーション。
(3)教育講座
 専門開発講座に毎年10,000人の学校教師が参加。学校野外活動で毎年10万人の生徒・先生方が来館。市内ベイエリアの科学担当の先生方が当館を2大科学ポイントとして評価。子供教育課外プログラムを年間、25地域コミュニティグループと7,000の子供・家族に実施。毎年、解説者養成プログラムに125以上の高校生を採用、訓練を実施。地域内の奨学生や科学者、教育者、芸術工芸家へのフェローシップ・プログラム。若者向けのキャリア開発と経験雇用のインターンシップなど。
(4)広報活動
 毎年600万人がホームページにアクセス(このホームページは、全米の最優秀科学サイト表彰のウェビー賞を何回も受賞)。教師向け・子供向け・家族向けの当館資料本が毎年25万部を販売。探究雑誌を季刊で毎回15,000部発行。当館ニュースを隔月で毎回13,000部を配布。
(5) 対外(国際)活動
 60以上の米国内・海外の科学館や博物館の創設のモデルとなる。当館の解説者プログラムが海外も含めて60以上の若者向けプログラムを指導した。
(6) 予算規模・スタッフ
 1,543万7,000ドル、経常損なし。(1989年度)。従業員399人、うちフルタイム135人。女性は52%、白人以外41%。ボランティア175人。
(7)施設・設備
 サンフランシスコ市内マリーナ地区の歴史的なパレス・オブ・ファインアート(美術宮殿)に位置する。
 マルティメディアスタジオ、図書室、資料・資材センター、有線放送完備の9教室を持った学習本部センター。インターネット放送スタジオ。150席の劇場(シアター)。機械器具・木工品・電子品売り場。生命科学実験室。喫茶・売店。広い無料駐車場など。
 館は貸用可です。ただし、午後閉館後のみ。

※クリックして下さい。
「ツーリズム関連のレポート・エッセイ集」メニュー へ戻ります。

※クリックして下さい。
「神戸・兵庫の郷土史Web研究館/郷土史探訪ツーリズム研究所」のトップ・メニューへ戻ります。

当研究館のホームページ内で提供しているテキスト、資史料、写真、グラフィックス、データ等の無断使用を禁じます。