中国料理あれこれ
 
ツーリズム関連のレポート・エッセイ集 15)
中国料理あれこれ
『香港駐在生活・こぼれた話こぼれなかった話』(中嶋邦弘)より
2002.2.1 神戸新聞総合出版センター 発行
香港は中国料理の展示場
 中国料理といっても種類が多く、中国各地の特徴がそれぞれ違うように、多様な味わいが楽しめる。香港で一般的に大別されている主なものに、北京、上海、四川、広東、潮州、精進などの各料理がある。
  北京料理は、中国でも黄河流域だが北方系の影響を強く受け、味付けも濃い目。魚より肉の料理が中心で、油で揚げたり、鍋物も盛んだ。「北京●(火へんに考)鴨(ペイチンガオヤー=北京ダック)」が有名。
 上海料理は、中国全土、特に長江流域の食文化が集まるところでミックス・アップされ、種類が豊富。味付けもメリハリがはっきりしている。お酒も近くにお馴染みの紹興酒の産地が控えている。秋のシーズン限定の「大閘蟹(ダーザーシェ=上海蟹)」、手軽な「小籠包(シャオロンパオ)」、「叫化鶏(チャオファジー=乞食鶏)」が有名。
 四川料理は、長江内陸の盆地が発祥で、唐辛子や四川味噌やガーリックなどの香辛料をたっぷり使って辛いのが特徴。辛いといってもその味わいはバラエティに富む。「担担麺(タンタンミェン)」、「麻婆豆腐(マーボートウフ)」、「魚香茄子(イュシャンチェズー)」が有名。 (左写真:広州酒家の名物「豚の丸焼き」。皮附近がこんがりパリパリと絶味)
  広東料理は、広東出身の人が多い香港ではメジャー。香港に隣接しているので本場の味も楽しめる。中国広東省の省都、広州市内にある「広州酒家(広州レストラン)」に玄関看板にも掲げてある有名な言葉「食在広州(食は広州にあり)」の通り、中国料理の代表である。海産物に野菜、机以外の四つ足、空飛ぶものは飛行機以外なら何でもござれという豊富な食素材を背景に、あっさりとした味付けで楽しめる。「鶏鮑●(走へんに羽) (ジーパオツー)」、「燕窩(イェンウオ =ツバメの巣)」が有名。
 潮州料理は、広東省の福建寄りの地で、刺繍で有名な汕頭(サントウ =すわとう)が中心。海鮮料理という印象が強い。お粥やスープものも多く、味付けは本当にあっさりしていて、日本人の好みにもピッタリで、駐在員家族達の一のお勧め。食前食後にでるお茶が美味しい。「魚●(走へんに羽)湯(ユウチータン=ふかひれスープ)」は特に有名。
(右写真:叫化鶏(チャオファジー=乞食鶏)。これを木槌で壊して食べる)
  精進料理は、魚や肉を一切使わないで、野菜や豆腐類で作った料理。これがまた、ちょっと見には普通の中国料理と変わらない調理と盛り付けででてくる。肉かと思えばそうではなく、味付けも舌触りや噛み応えも良く似ている。素材当てクイズをやりながら食べるのも一興。昨今のダイエット・ブームで人気とか。
中国料理は日本でも食べ飽きたなどとおっしゃらずに、香港は中国料理の食文化集積地であり、調理の腕、食素材、店の雰囲気など本当に世界一で、色々と試し楽しもうではありませんか。
(左写真:修業中のお坊さんも垣根を越えて飛んでくるという「仏跳●(ファッチュウチョン)」スープ?)
飲茶の本場
 もともと広東料理の範ちゅうではあるが、お茶を飲みながら、色んな種類の一品を食べる。これが飲茶(やむちゃ)である。早朝から昼過ぎまで、朝食時、昼食時には、中国料理店はこのスタイルが多い。香港の人は、特に昼間、家で食事を作ることは珍しく、ほとんどが外食。それで、朝早くから、また昼前も十一時頃から大勢で押しかけ、事前の席取り、順番並びは常識。
 店の受付で並び、係りの人に人数を言って席に案内してもらう。相席はまず無いので、人数に見合ったテーブルが与えられる。着席すると、ウエイターがやって来て、各種のお皿、お茶碗、お箸、ちりレンゲ、がら入れ、注文伝票などを並べて、お茶の種類を聞く。黙っていれば、一般的な「菊普(こっぽう)」即ち菊の花が入った普●(シへんに耳)茶(ぽうれいちゃ)が出てくる。クセがあってカビ臭い味であるが、慣れるとこのお茶でなければ飲茶ではなくなる。ここで、まずお箸をお茶で洗うのが通。
(左写真:飲茶は大勢で、談話しながら食べる)
 用意が出来たところで、テーブルの間を一品料理を載せて、おばちゃんがワゴンを押して回ってくる。これを、「点心(でぃんさむ)」といいます。そして欲しい点心を注文または自分で取る。すると、テーブルの注文伝票にスタンプが押される。蒸篭に入っていたり、鍋に入っているので何か解らないことが多いが、聞いて解らなければ「唔該(むこい)」と言って蓋を取って見る。お茶を注いでもらったら、握った指でテーブルをトントンと叩くと、これが「ありがとう」の意味。食べるのが忙しい時に、威力を発揮する。急須のお茶が無くなれば、急須の蓋をずらして載せておくと、これが合図となって、ウエイターが飛んできて、お湯を追加してくれる。 (右写真:飲茶の点心をワゴンで売るおばちゃん方)
 点心の基本的なものは、蝦が丸ごと入った餃子「蝦鮫(はーがお)」、おなじみ「焼売(しゅうまい)」、にくまんの「叉焼飽(ちゃーしゅうぱお)」。「蝦鮫」の美味しさで、その店の評価が決まると言われている。その他、鶏肉、豆腐、肉団子、甘いデザート類など、物凄い種類の点心に加え、その店独特のものなど、本当に食べきれない。
 最後に、「埋單(まいたん=お勘定)」と叫んでウエイターを待つか、伝票を持ってレジへ行って支払う。お腹一杯になること請け合い。 (香港1990年当時)
※中国語の読み方の標記で、片仮名は北京語(普通語)、平仮名は広東語です。

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