銀の馬車道(旧生野鉱山寮馬車道)を辿る
  (郷土史にかかる談話 25)
銀の馬車道(旧生野鉱山寮馬車道)を辿る 
 明治新政府は、殖産興業の要である鉱物資源開発増強のために生野銀山を官営化し、コアニエら外国人技術指導者を招き、最新の技術と設備で生産力アップを図りました。そして、生野銀山の鉱石採掘と精錬と製鋼の工場等需要地との産品・資材の輸送力を飛躍的に工場させる連絡道路を、生野銀山から瀬戸内海の産業港である飾磨の港まで、 明治9年(1876年)市川沿いに49q新規に開通させました。

(左写真:銀の馬車道交流館に展示されている鉱石運搬専用馬車の復元)
 当時、鉱山長の朝倉盛明とコアニエが招来したシスロイ技師長は、明治6年(1873年)から欧米での最新式道路造成技術「マカダム式」を導入し、高速通行が可能な馬車道が整備されました。荷駄を満載した馬車が短時間に往来できたこの「銀の馬車道」は、「生野銀山道」とか「生野鉱山寮馬車道」とも呼ばれ、いわば現在で言う「日本で最初の高速産業道路」だったのです。
その後、増大する輸送需要に対応するために、大量輸送が可能な鉄軌道として播但鉄道(現在のJR播但線)が明治28年(1895年)に開通、銀の馬車道はわずか20年足らずで、その使命を終え、徐々に姿を消して行きました。
(右写真:生野銀山の正門。明治22年の元皇室財産として菊の御紋入り石門)
(1)完成から140年近く経過した現在、「銀の馬車道」の大部分は国道や県道等として今も共用されています。銀の馬車道の沿線の中間点付近の神河町には「銀の馬車道交流館」が開設され、手作り馬車の復原模型、鉱石、古文書類、沿線の歴史や特産品を紹介しています。馬車道跡を辿れば、当時の面影を残す記念碑等が見られることでしょう。
銀の馬車道路線図

銀の馬車道の出発地点、旧鉱山寮生野支庁。現、三菱マテリアル生野事業所の正門付近。(朝来市生野町)

生野の鉱山街の中を通り抜けてゆく馬車道。ここは、元、銀山関係の鍛冶屋などの職人街でもあった。(朝来市生野町)

県が平成18年に銀の馬車道の試掘調査を実施した地点に立つ解説看板。(神崎郡神河町)
D
神河町の大歳神社付近にある銀の馬車道馬宿り。馬車道沿いの道の駅ってところか。(神崎郡神河町)
E
現存する昔の開通時の銀の馬車道。原川原池沿いにカーブしている。(神崎郡神河町)
F

旧国道(銀の馬車道)沿いの但陽信用金庫の1階に開設されている「銀の馬車道交流館」。(神崎郡神河町)
G

交流館前の銀の馬車道沿いにある古民家。造酒屋さん。当時の雰囲気が残る。(神崎郡神河町)
H
辻川の元大庄屋「三木家」の門前を通っていた銀の馬車道。大きな看板が、もちむぎ食品センター前に立つ。(神崎郡福崎町辻川)
I

古い道を明治9年に馬車専用高速道に改良した記念碑「馬車道修築碑」。市川を渡った地点に立つ。(姫路市砥掘)
J

飾磨津物揚場跡。 鉱石陸送の終着、飾磨港から船で瀬戸内の精錬所へ積み出した。(姫路市飾磨区宮)



「銀の馬車道」ホームページ
銀の馬車道ネットワーク協議会   http://www.gin-basha.jp
(2)地元では、銀の馬車道という生野鉱山に関連する遺産を活用して、生野から姫路飾磨に至る広域的な地域の連携と交流を図り、多くのツーリストを迎える体制を構築する母体として、商工会議所・商工会をはじめ青年会議所、旅行社、マスコミ等を構成メンバーに「銀の馬車道メットワーク協議会」を結成しました。
 これまで、小学生向けDVD「銀の馬車道アドベンチャー」やパンフレットの制作・配布、銀の馬車道看板の設置、銀の馬車道サイクリング、観光ボランティアガイドの活動支援、マカダム式道路試掘調査と模型作成、銀の馬車道ラッピングバスの運行、関連商品の開発支援、ツアーバスへの支援、交流イベントの開催支援、人情喜劇「銀の馬車道」への支援、銀の馬車道交流館への支援などの「銀の馬車道プロジェクト」を実施しています。
(3) 叉、2012年12月に、日本ユネスコ協会連盟の「プロジェクト未来遺産」に選ばれました。未来遺産は、100年後の子どもたちに残したい産業遺構・自然・文化の保全・普及を促進するために選ばれました。
(4)神河町教育委員会は、2016年11月、「銀の馬車道」を発掘(神河町吉冨)し、当時の築造方法が判明する道跡を発見したと発表しました。 国道312号の脇道で、深さ60cmのところから、石と土の三層構造で、道路端に縁石(補強用)が積まれた道跡を発掘しました。マカダム式の道路断面がはっきりと出ました。道造りの技術、実態解明がすすむことを期待します。(2016年12月)
 今、多くのハイカーたちが銀の馬車道を踏破して、見聞録をブログやホームページで賑わせています。みなさまも是非トライしてみられてはいかがでしょう。(2011年3月〜、2016年12月)
※関連ページへLINK(写真をクリック)

(8)准世界遺産だ! 
生野鉱山


(28)明延、神子畑、生野
と3つの鉱山を繋ぐ
「鉱石の道」

(21)ひょうごの主な鉱山
・鉱山跡(pdf)

※クリックして下さい。
「郷土史にかかる談話室」メニュー へ戻ります。

※クリックして下さい。
「神戸・兵庫の郷土史Web研究館/郷土史探訪ツーリズム研究所」のトップ・メニューへ戻ります。

当研究館のホームページ内で提供しているテキスト、資史料、写真、グラフィックス、データ等の無断使用を禁じます。