“緊急提案”
 シニアが注目する旅のテーマ
 今やシニア(60歳代、70歳代〜。ご婦人方も)たちが観光旅行の主役に躍り出ています。シニアたちの行動のキーワードは、例えば、健康・快適、安心安全、娯楽・知的好奇心、ファッション・美容。即ち、元気で自分なりの価値観を大切にする生活者。地域への貢献を考える。知的好奇心・探究心でテーマを持つ、次なる達成感。それに加えて、最近では若者たちだけでなく、パソコン・携帯・タブレットなど(フェイスブック・ツイッター・インスタグラム・ラインなどのSNS)が使えるシニアが増えています。このアクティブ・シニアたちをいかにして観光の旅に招くかのメイン・ターゲット・主人公になっているのです。
1.シニアの旅行動向
最近の関係機関のシニアに対する観光動向を見てみましょう。
(1)シニアの観光消費額〜シニア(60代70代)と予備軍(50代)との年間消費額の比較〜(ビジネス用途は除く)
@ 観光消費額: シニア20万円>予備軍15万円、とシニア層の方がかなり多額を支出している。主にリタイヤした後に観光旅行によく出ているのを表す。
A ネット通販消費額: ちなみに、ネット通販での購入額をみると、シニア、予備軍とも12万円、とほぼ同額。
B 趣味への消費額: これも、 シニア13万円>予備軍12万円、と僅かながらシニアの方が多い。
 (2019年大和ネクスト銀行調査)
(2)旅行観光年間消費額〜消費額の大きい年代の比較〜
@ 宿泊旅行:60代>50代>40代>70代、と60代が多く支出する。
A 日帰り旅行:60代>40代>50代>70代、と同じく60代がトップ。
B 60代70代の比率:全体の33%、宿泊旅行の34%、日帰り旅行の35%を占める。
 (2016年観光庁旅行観光消費動向調査)
(3)シニアの旅行に対する意識
@ 行きたい旅行のタイプ
  60代男 @自然51%、A温泉50%、B歴史文化49%、Cグルメ40%
  60代女 @自然58%、A温泉52%、B歴史文化48%、Cグルメ43%
  70代男 @自然57%、A歴史文化50%、B温泉48%、Cグルメ31%
  70代女 @自然54%、A温泉49%、Bグルメ35%、C歴史文化33%
旅行に対する憧れ的には、大自然が満喫したい、温泉に行きたい、特色ある地域の歴史文化を見たい、美味しいグルメを求めて、旅行に出かけることを渇望している。
A 旅に出る動機
  60代男 @美味しい物72%、A思い出づくり51%、B日常からの解放50%
  60代女 @美味しい物71%、A日常からの解放67%、B美しい物54%
  70代男 @美味しい物64%、A家族親睦45%、B日常からの解放40%
  70代女 @美味しい物57%、A日常からの解放56%、B友達付き合い48%
実際に旅行に出かける切っ掛けとなったのは、地域の美味しいものを食べたい、家族や友達との親睦のためとか、特にご婦人方は、何と言っても、日常の家事や行事からの解放が大きな要因となっている。
(2020年JTB財団旅行年報)

(4)シニアの「趣味旅」意識
@トレンドは“アートな旅”:写真撮影、美術館博物館めぐり、陶芸等体験などなど。
A趣味をきっかけに旅:芸術文化豊かな地域が人気50%(国内38%、海外12%)、満足度は94%で、主に地域の人との交流に積極的に行動する。
B60代の女性は、家族よりも趣味友達と趣味旅:65-69歳女性は趣味友達とが60%、全体でみると、家族とは59%、趣味友達39%、とやはりシニア層が高い。
 (2019年HISの「趣味旅マガジン」)
 以上、シニアがこれからの旅行動向の中心であることがよく分かります。
2.シニアが注目する郷土・旅先のテーマ
(1)シニアの特性
@知的好奇心(Aと兼ねられると強い)
  実体験、詳細資料、語り部ガイドさん解説、初物レア物、豪華旅、民俗芸能(お祭り等)、
  懐古経験(田舎、古民家、下町)、現地調査、地元の人との交流・・・・
A健康増進
  ウォーキング、トレッキング、スポーツ、ポタリング(サイクリング)、温泉、静養・・・・
B趣味の追求(Aと兼ねられると強い)
  写真、鉄道、工芸、美食、キャンピング、コレクション、SNS自慢、実益も・・・・
C顕著な女性参加(夫婦連れ増加)
(2)シニアが好きな郷土アイテム
@近代化遺産(世界遺産から廃墟まで)
  歴史的建築建造物、産業遺産、鉱山・鉱山跡、軍事遺産・・・
A鉄道路線(シニアから子供たちまで)
  廃線鉄、乗り鉄、撮り鉄、車両鉄、駅鉄、収集鉄・・・
B考古、古代遺跡
  石器時代、縄文時代、弥生時代、古墳時代、山城、古窯、古代七道・・・
C街道めぐり
  西国街道(山陽道)、山陰道、山陽山陰連絡道、東海道、熊野古道、山の辺の道・・・
D伝統的工芸品など
  地場産業・産品、陶芸・焼物、和紙、竹細工、織物・・・
E聖地巡礼(話題の地。シニアから若者たちも)
  漫画、小説、映画、テレビ、歌などの舞台・ロケ地めぐり・・・
F昭和レトロ
  自分たちの生活史、グッズ、個人コレクション、展示館・販売店・・・
G田舎暮らし(シニアから若者たちも)
  農業志向、古民家利用、テレワーク、里海里山、趣味生活・・・
H郷土のその他話題
  無形文化遺産、日本遺産、城跡、民俗芸能、ふるさと偉人伝、ご当地グルメ(B1も)、歴史的拠点、
   戦場跡、埋蔵金伝説、多島海、話題の神社仏閣、注目イベント、自然渓谷、桜花紅葉、
  SNSでの存在感・・・
3.身近な観光資源の活用と受入れ体制の整備
シニアの特性を踏まえて、身近にある(2)のアイテムを観光資源と して整備して、次の活用策や受入れ体制の整備を進めたい。
@実体験、ご当地グルメ開発、豪華旅、クルーズ船、レア物の提案。
A田舎暮らし、下町暮らしへのお誘い。
   ※Uターン、Iターンの促進。
   ※古民家の活用、貸別荘(アトリエ、陶芸作業場付き)、陶芸等地域文化の指導付きメニュー開発。
B漫画や映画、SNSなどメディアの活用。
   ※広報などに漫画を活用する。
     (シニアたちは、手塚治虫氏や横山光輝氏の漫画 週刊漫画雑誌「少年マガジン」、
     「ゴルゴ13」など、すでにコミック世代。その他の全ての世代への訴求力は絶対的。)
   ※郷土アイテムのストーリー化、漫画化やテレビドラマや映画化へのプロモーション。
     (郷土の偉人伝、事件簿、特産品物語など・・・)
   ※市独自のフィルムオフィスを用意する。
    行政等各界へのアレンジ、市民サポーターグループ、市内の景観等の発掘とデータ化、
    物語の舞台やロケ地への誘致など、きめ細かいサポート体制が喜ばれロケのリピーターとなる・・・
   ※地域特別ファン向けプレミアム会員制度。SNS活用。・・・
C各種イベントの企画。
   ※途絶えた地域の祭などの復活。感染症対策・・・
D復活するインバウドの取り扱い。
   ※量から質へ。感染症対策の浸透、インバウンド全依存型からの脱出。・・・
E街並みや案内看板の整備、環境清掃の徹底。
   ※家並み、道路、憩い設備、看板、交流拠点の整備、街の美化など。・・・
Fボランティアガイドさん・語り部さんの養成。
   ※この人たちこそ重要な観光資源。地域の受け入れ態勢の最前線で、観光リピート評価に影響する。
    観光客のニーズを最前線で把握し、行政等にフィードバックできる。
Gまち歩きのツールの整備。
   ※地域内移動の利便性。特定区間リムジンサービス、レンタサイクル、
     観光タクシー借り上げ助成制度。遠隔地観光のサポート。・・・
Hフットパス(ウォーキング)の整備。
   ※コース設定、フットパス沿道に交流・休憩・宿泊拠点。(イギリスの「フットパス」整備を参考に)
   ※「西国街道」など旧街道のウォーカー向け整備。(ウォーカー向けの道の駅、茶屋、旅籠など・・・)
   ※鉄道廃線跡ウォーク。
I地域の人々のホスト意識の向上徹底。

シニアの旅行に対する意識、動機、目指すテーマなど、これらをご参考に、対応策や受け入れ態勢整備を進められたい。(2020年11月)
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